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「今ないテレビ」を作らなければテレビはホントにヤバい

誰得?でnoteを書くのだろうと思うのだが「お世話になったテレビに対する恩返し」としか言いようがない。しんどいけど。

ダウンタウンの松ちゃんが発言したことで数ヶ月前から注目されたのが「コア視聴率」である。テレビは長いこと世帯視聴率で評価されてきたのだが個人視聴率にほぼ完全にシフトした。「日本中のいくつの家庭でその番組が見られているか?」ではなくて「日本中の何人のどんな年齢層の男女がその番組を見ているか?」に変わったということである。

それに従い「アクティブ世代向けの広告を出している広告主は”そのターゲットがどのくらい見ているか?”を広告出稿の指標にする」という当たり前のことが起きている。これは逆に「老人向けお墓や健康食品の広告を出す広告主は老人がどのくらい見ているか?が出稿の指標になる」ということでもあるのだが世の中の商品のほとんどがアクティブ世代向けらしいのでこの「コア視聴率」がテレビの指標に急速になっているということである。
(コア視聴率は各局まだ少しばらつきがあるのだが大体13歳〜49歳男女)

テレビ局は巨大空母のようなもので簡単に進路変更ができないと思い込んでいたがビジネスの指標が変わるとこれほどまでに素早く転換するのかと思うほど各局の編成が目に見える形で若者向けにシフトしている。
そこで行われているのが『お笑い第7世代』を中心としたキャスティングなのであるが”それはちょっと違うんじゃないの?”というのが今回のメインテーマ。

若い人はどんなテレビを見るか?というのは実は昔から変わっていない。それは「今の若い奴は」と嘆く落書きが4000年前からあるのと同じくらい変わっていないのだ。それは「今まで見たことないテレビ」だ。さらに言えば「今あるテレビへのアンチテーゼを感じるテレビ」だ。
これはお笑いタレントにも言えることで小学校4、5年にアニメからバラエティに興味が移る頃、最初はお父さんやお兄ちゃんが見ているテレビ番組を一緒に見る。そこに出ているとんねるずやダウンタウン、その前の世代ならたけしさんやさんまさん、さらに遡れば欽ちゃん・ドリフ。テレビの創成期は林家三平さんなどをそれぞれの時代で見て親兄弟と一緒に笑う。それが14歳くらいになると「お兄ちゃんと違う自分たちだけのお笑い」が欲しくなる。それがお笑いが第1世代〜第7世代まである理由だ。どちらが面白いのではない。今までとは違う自分たちの世代のお笑いが欲しくなるのだ。これはファッションとか音楽にも見られることであるが「先行世代とは違っていること」が新鮮で”自分たちという世代の発信ができるということ”は『人間というものの本質』に近いとさえ思えるくらいこの繰り返しが起きいるのだ。

テレビの70年の歴史を見てもそれは起き続けてきた。予定調和であることを破壊してきた歴史とも言えるが「欽ちゃんのアドリブ」に始まり「ひょうきん族の楽屋話の映像化」「元気が出るテレビのドキュメント性」そして「電波少年」。それらは『それまでのテレビのアンチテーゼ』として誕生し最初に熱狂的に支持したのは14歳の少年少女だったのだ。

ところがテレビはその「それまでにないテレビを生み出す活力」を長いこと失っているように思える。2003年スタートの「アメトーク」で当時主流だったロケバラエティのアンチとしてスタジオトークに振り切って”ひな壇芸人”というスタイルを生み出したというのが記憶にある先行するものへのアンチの最後である。

だから今テレビ局の編成が向かおうとしている「第7世代とかSNSで話題のタレントをキャスティングしておけばいい」という方向は当然ながら若い人には支持されるわけがなく見透かされるだけだ。

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ

「北の国から」は全編富良野ロケそして子供の成長と同時進行のドラマに挑戦し「抱きしめたい」は都会的という本質を映像化し女性の新しい生き方を提示した。「高校教師」も数々のテレビドラマの常識に挑戦した。そしてそれらはその当時の若者に支持され次のテレビのスタンダードになった。そしてそれらは年月と共に「当たり前のもの」になり、また次の「今ないもの」に置き換えられていった。これがテレビの70年の歴史なのだ。

この歴史に従い「ただ若い人に受けているらしいタレントをキャスティングした旧態依然のテレビ」ではなく「こんなテレビ見たことない」というテレビ番組を生み出すことができるかがテレビ局が今後生き残るかどうかの分かれ道なのだ。

こんな広告見たことない。こんなキャンペーン見たことない。こんなお菓子見たことない。こんなレストラン見たことない。こんな車見たことない。こんな都市計画見たことない。数々の挑戦がいろんな業界で行われ当然ながら失敗して歴史から消えたものもたくさんある。しかし次の時代の先駆となりその業界の新しいスタンダードになったものもある。そしてその変化がその業界の存続を支えてきた。

「どこも似たような番組ばかりだ」という今現在のテレビに向けられた言葉を真摯に受け止めることができるのか?そしてそれを跳ね返すテレビ制作者がいるのか?『こんなものテレビじゃない!』でも『面白いよ!』と言わせてくれる番組が出てきてほしい。

ちなみに「そんなこと言うならお前が作れ」と言ってくれる人がいるかも知れない。(いや、いないかw)ジジイが若い人に向かって作ると間違いなく見当違いのものを作る。30代ギリギリ40歳でそれだけの力と「今までにないものを作りたい」と思う人間が育っていてそれを採択できる組織になっているかが運命を分ける。



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