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クローズドガードの基礎

はじめに


今回の教則動画を作るに当たってnoteも書きました。
僕がクローズドガードというものを、どのように捉えているか、またそれぞれの技を学ぶ意味や、初心者にオススメする理由などを述べています。
これを読んで動画を購入したいと感じたり、購入した後も動画学習の補足としてたまに読み返してもらえたりすれば嬉しいです。

①クローズドガードでまず大事なこと


クローズドガード。
初心者が最初に必ず教わるガードで、白帯から黒帯までずっと使えるガードです。
ただ脚を組んで相手を脚の中に閉じ込めるシンプルな形のガードですがシンプルな分、型にハマったときは強力です。

柔軟性も必要ないので誰でも使うことが出来るので、最初に習うのに適しています。

クローズドを使う上で大事なことはいくつかあるのですが、第一にまずクローズドガードをキープ出来ることが肝心です。

クローズドガードは脚で相手の体幹を閉じ込めている状態なので、外すことは容易ではありません。
そしてクローズドガードに閉じ込められた相手は、基本的に中からいきなり極め技を仕掛けることは出来ません。
袖車絞めなど例外はありますが、基本的に極まる確率は低いです。

なので一部の例外の技を注意して、クローズドガードをキープすることが出来れば、それだけで負ける可能性は大きく下がります。

クローズドガードを組んだ相手が徹底して固める戦法を取ったら黒帯でも外すのは困難になります。(実際に試合でそれをやったら膠着を誘発するため下にルーチのペナルティが掛かるので、完全に固め続けるのは現実は難しい。※ペナルティ4回で反則負け)

ではクローズドガードのキープのために必要なことは何かというと「密着」です。
脚を組んだ時に自分の脚と相手の腰に隙間がなるべく出来ないようにするのが大事です。

隙間がないことで密着度が増すので、相手は脚を外すのが困難になります。また逆に、下は脚を使って相手の状態を崩すことが容易になります。

なのでクローズドガードを作った時は焦って技を仕掛ける前に、まず一度自分から相手に近づくようにして、クローズドガードをよりタイトにしましょう。

②最初から技はいきなり掛からないけど、それでもよい

初心者がクローズドガードから使う技で最初に習うのは。例えば、十字絞め、腕十字、三角絞め、アームロックなどなど。

クラスでいくつか技を習って、さあスパーリングで試してみようとなりますが、実際は打ち込みのように掛けることはかなり難しいです。

ちょっと技の入りだけ出来たかな、というのが関の山といったところでしょう。

実戦で掛けるのは難しいなとなりますが、そこまで落胆する必要はありません。技というのはそういうもので、必ずしも極められなくてもよいです。
前の項目で説明したようにクローズドガードはまずキープをすることが重要です。

クローズドガードから色々な技を仕掛けることで相手はそれを防がなければなりません。
技の対処に追われるため、相手はクローズドガードを割る作業に集中出来なくなるので、結果キープすることに繋がるのです。

これは私がベーシッククラスや白帯クラスで説明するときによく言うのですが、「クローズドガードから相手が割ってくるのを邪魔してください」と伝えます。

初心者のうちはあまり細かい手順を伝えても頭で処理するのが難しいと思います。それよりも短い言葉で直感的に分かるように伝えた方が、取り敢えずは大まかに理解が出来るのではないかと思います。

またスパーリングでなかなか技が掛からなくても打ち込み自体は無駄ではありません。

例えば十字絞めを練習するにしても、初心者にとっては基本的な動作でも疲れますし、打ち込みだけでも十分な筋力トレーニングになります。

柔術は技の細かさが注目されますが、フィジカルも大事な要素です。チリも積もれば山となるという言葉があるように、少しずつの打ち込みの積み重ねで肉体の強さも増していくはずです。

③それぞれの技を学ぶ意味


今回の教則ではクローズガードからの基本的な5つの技を紹介しました。

今回はクローズドガードからでしたが技というものは応用して他の場面でも使うことが出来るので、実際は様々な場面で役立ちます。

5つの技それぞれの意味を説明します。

◾︎十字絞め
クローズドガードからおそらく一番最初に習うであろう技の一つです。
クローズドから安全に仕掛けることが出来ますし、相手のベースを崩すことにも繋がるので、クローズドからの攻撃の起点になります。

よく基本の技という言われ方をしますが、実際には練習でも試合でも極めるのはかなり難しい部類に入ると思います。

基本の技過ぎるため、逆に誰でも知っているので対処も簡単な技なのです。

なので実際は十字絞めを嫌がって反応してきた相手に対して次の技を繋げていきます。
今回の教則ではヒップスローへの連携を説明していますが、他にも腕十字やバックテイクなど色々な技に繋げられます。

また逆襟を掴むグリップは十字絞め以外にも非常に多くの場面で使います。
ハーフガード、片襟片袖、パスガードなど逆襟を使って相手をコントロールすることは多いです。

十字絞めの打ち込みだけでも、襟を持つ“組み力”のトレーニングになるはずです。

◾︎ヒップスロー
僕は初心者さんに技を教える時は、まずヒップスローから教えることがほとんどです。
理由としては
①動作がシンプルで手順さえ守れば初心者でも使える。
②他の技との連携がしやすい。

①について
ヒップスローは名前の通りヒップ(お尻)を使って相手を投げるシンプルなスイープです。
お尻周りの筋肉は大きな筋肉なので、初心者でも手順を守れば簡単に相手を投げることが出来ます。
もちろんそれを実戦で使うのはまたハードルが上がりますが、手軽さという意味では最初に習う技に適しています。

②について
ヒップスローはそれ単体でも強力ですが、他の技と組み合わせがしやすいメリットもあります。
今回の教則でもたくさん紹介していますが、アームロック、十字絞め、アームドラッグなどと連携出来ます。

技というものは単体で使うものではなく実際は色々な技を組み合わせて仕掛けていくものです。
ヒップスローはそういう技の連携を学ぶ上でも使いやすく、技の理屈(どのタイミングで人が倒れるか)を知ることにも適しています。

この2点が理由としては大きいですが、他にも投げられる感覚を身につけるという点も怪我の予防という観点では大事です。

◾︎アームロック
アームロックはクローズドガード以外にも使う場面が多い技です。トップからの極めはもちろん、パスガードやバックテイクにも利用でき、腕十字に連携もしやすいです。
バックの時のタスキ掛けもアームロックの組み方でコントロールすることが多いです。
人間は腕一本を制されるだけでも、かなり不自由になります。極め技というよりも相手をコントロールする技といった感じです。

本教則の「7.アームロックのコツ」でもクラッチについて説明しています。
地味な内容ですが、かなり重要なコツなので最初の内から意識づけをしておきましょう。

◾︎アームドラッグ
バックを取ることは下から攻める上で大事な攻撃手段です。
クローズドガードに限らずにガード(下)からの攻撃を大まかに分けると、「極め」「スイープ」「バック」の3つです。
この3つを組み合わせることで、相手のどんな動きに対しても臨機応変に対応することが出来ます。

アームドラッグはバックを取ることの重要性を学ぶ上でも必要であり、また他の技との連携もしやすいので初心者が学ぶのに適していると言えます。

ただ腕を流してバックに回るだけの非常にシンプルな技ですが、ほぼリスクがないのでクローズドガードからの初手としては十字絞めと同様に有効な技です。

◾︎フラワースイープ
これも技の理屈としてはとてもシンプルです。
相手を前方に崩して足をすくってひっくり返すだけです。

ですがフラワースイープはこれ単体で使う場面よりも、他の技からの繋ぎとして使う場面の方が多いです。
今回の教則で説明したものとしてはアームドラッグから相手が前に体重をかけて来た時に使う流れです。(名前はペンデュラムスイープとして紹介)

このようにフラワースイープは相手が他の技を嫌がり前重心になってきた時に有効な技です。腕十字や三角絞めとの連携でもよく使われます。

この足をすくう動作というのは相手がただ立ちがってきた時に仕掛けるのも有効です。

足をすくわれるとバランスを崩して相手は正座の状態に戻ってきます。スイープが出来なくても相手の体勢を崩せてクローズドガードにキープ出来るだけでも十分な効果があります。

今回のように技として紹介する際はフラワースイープといった名称を使っていますが、大事なのは足をすくってバランスを崩すということです。

④まとめ


このように一つ一つの技はそれ単独で存在するのではなく、他の技や動きと共通したものが多くあります。
クローズドガードに限定したとしても、これだけ多くの動きが学べます。

これがオープンガードになってくると別世界です。自分も自由に動ける分、相手の動く範囲も広がり技の難易度も格段に上がります。

なのでやはり初心者さんはクローズドガードから練習するのが安全で、かつ技の理屈を学ぶ上でも分かりやすいのでオススメです。

僕自身も白帯クラスやベーシッククラスで下からの技を教える時はクローズドガードが多いです。
地味な技の繰り返しですが、多くの技の基本になる動きですので色帯になっても必ず活きてくるはずです。

また今回は代表的な技である腕十字と三角絞めは収録しませんでした。
その理由は初心者にとっては少し難易度が高いというのもありますが、大きく足を開いて技を仕掛けるのでクローズドガードを解除するリスクが大きいためでもあります。

今回紹介した5つの技は、失敗したとしてもクローズドガードに戻しやすいです。
この教則はクローズドガードをいかにキープ出来るかというのが一つのテーマでもあったので、基本的な腕十字や三角絞めは除外して、より安全性の高い技のみを紹介しました。

なので初心者さんは、まずこの5つの技を中心に練習するのを個人的に推奨します。
今回の教則の技だけでも(クローズドガード限定ですが)、それなりにスパーリングはこなせるようになってきます。

地味な技ばかりですが柔術の土台になる基本の技です。地道に気長に練習してください。

PS.
腕十字や三角絞めは深掘りすればそれ単体でも教則動画が撮れるほど、どちらも奥が深い技です。
気が向いたらそれぞれ単体での教則も作るかもしれません。

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