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シード期の法律事務所のメンバー構成

「もし自分がこれから全く新しい企業向けの法律事務所を作るとしたら、どんな法律事務所を作りたいか」という点について、何回かに分けて、私見たっぷりの妄想をつらつらと綴りたいと思います。

第5回はシード期の法律事務所のメンバー構成についてです。

今回の内容は、ジェイソン・フリードらの「Rework: 小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則」を参考にしています。小さなチームでまずはビジョンやカルチャー、仕組みづくり、コアなファンづくりに注力したい、という感じです。

旧来の法律事務所はどうか?

弁護士の独立・開業に関する書籍やブログによれば、法律事務所の初期のチーム作りはだいたい以下のパターンを辿ります。

① 1人または数人で事務所を設立する。
② 事務員を雇う。
③ イソ弁を雇う。

ただ、私が独立するならば、このようなパターンは避けると思います。

他の弁護士を誘うか?

これは悩ましいところですが、誘わないかもしれません。他の弁護士を誘うメリットは、①事務所として多くの案件を受けられる、②作業分担・ダブルチェックをできる、③専門性の違う弁護士と組めば、事務所としての専門性が広がる、④経費をシェアできる、といったところでしょうか。

①について。最初はビジョンに理解を示していただける少数のクライアントと可能な限り密にコミュニケーションをとり、潜在的なニーズを検証することに注力したいと考えています。そうすると、シード期においては①は必ずしもメリットではなくなります。

②について。作業分担やダブルチェックにより、アウトプットのクオリティは上がります。他方、これは弁護士(有資格者)である必要はないと考えられます。(後述するパラリーガルの話に繋がります。)

③について。シード期には専門性をむやみに広げることはむしろ命取りだと思います。まずは大きな課題を見つけ、それに絞って課題の質をあげ、ソリューションの質を上げるという過程を辿りたいからです。

④について。これは重要ですね。新しい法律事務所を作る上での本質からは離れていますが、先立つものがなければ何もできません。

以上から、頭数を増やすという意味での弁護士は、(経費を折半するといった資金繰りの面を除けば)必要ないというのが今の考えです。ただ、共同創業者として、リスクをとり、同じビジョン・文化を共有し、一緒に絵空事を描けるのであれば、それはそれで楽しそうです。

単なる事務員を雇わない

最初は事務員を雇わないと思います。その代わり、既存のサービスをフル活用します。例えば、freee・MF、SmartHRなどでしょうか。セールスフォース、Zuoraなども使えそうです。他にも法律事務所があまり導入していない業務効率化サービスが数え切れないくらいの存在します。

既存のサービスといってもお金を払えば全てやってくれる訳ではなく、使いこなせるようになるまでは大変です。なので、経験のある事務員さんに全て任せた方が最初は楽だと思います。

ただ、「楽をするための最初の努力は惜しまない」という考えを徹底したいです。人がやることを可能な限り減らす仕組みを作りたいです。

弁護士になりたての頃は全部自分でやってみる癖があったこともあり、楽をするための仕組みづくりを最初に自分で行うことには全く抵抗がありません。(今では信頼できる秘書さんにすっかり頼りきりになってしまいましたが…。)

もしバックオフィス専門の方を雇うとすれば、例えば「セールスフォースに関する専門的な知識がある」とかそういった観点で必要が生じたタイミングで考えることかなと思います。

パラリーガルを誘いたい

これは絶対に誘いたいです。個人的な経験からすると、パラリーガルの能力は多くの場面で弁護士を凌駕します。ただし、弁護士の部下として、弁護士の代わりに作業を処理するという役割を求めている訳ではありません。

自律的に考えて行動することに長けた法務経験者やパラリーガル経験者の方と一緒に、パートナーとしてやっていきたい気持ちが強いです。

例えば企業の法務部を一から立ち上げた経験だったり、私が詳しくない実務的な部分だったり、そういったあたりを補完しあえれば、弁護士が2人で協力し合うよりも大きなシナジーが生まれると思います。(もちろん弁護士法等との兼ね合いは必要ですが、小事です。)

エンジニアを誘いたい

あとはエンジニアを誘いたいです。ただのエンジニアではなく、弁護士とコミュニケーションを取れるエンジニアです。

自分の想像している法律事務所は、「UXの向上」と「徹底的な効率化」が両輪です

前者をリードするのが弁護士やパラリーガル、そして後者をリードするのがエンジニアです。しかし、これは一筋縄では行かないと思います。というのも、「日本語→法律用語・文章→機械語」という2段階の翻訳が必要になるからです。2段階目の翻訳は、弁護士が機械語を理解するか、エンジニアが法律用語・文章を理解するかが必要となり、現実的には両者がすり寄って、お互いが理解しあえるように努力する必要があります。そしてこれは大変なことです。残念ながら私はプログラミングの素養はないので、ここは悩ましいところです。

ただ、旧来の法律事務所の中で弁護士が手作業で行なっていることのうち、エンジニアの目から見て、何が自動化できて何が難しいのかということは、日々の法律事務所のオペレーションの中で逐一議論しないことには解像度が一向に上がりません。そのため、エンジニアとの協働は避けて通れないと考えています。

まとめると…

シード期の法律事務所における自分の理想的なメンバー構成は、弁護士1人か2人、パラリーガル1人、エンジニア(人数は必要に応じて)でしょうか。

ただ、これはあくまで理想で、現実的には弁護士1人、エンジニアは特定の人に継続的に外注という最小構成で始めて、売上の目処が立ってきた時点で、エンジニアに専属になってもらい、また、パラリーガルの方にジョインしてもらう、という流れが1つの有り得る流れかなと思います。

最後に大事なこと

これを破壊的イノベーションと呼ぶのが適切かどうかはさておき、全く新しい法律事務所を作ることに興味がある方は、ぜひツイッターなどでご連絡ください!


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