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草引きへのモチベーションを上げる三つの方法

急に涼しくなった。
ちょっぴり寒いほどだ。
本来の自分が戻ってきた。
体が動く!

暑い間ほったらかしにしていた石玉垣外の草を引こうと思った。
鎌と箕と竹箒を持って、上機嫌で現場に向かう。

なぜだろう今年の夏は、いつも生えてこない玉砂利の隙間からもわしゃわしゃと草が生えてきて、石玉垣の外まで手が回らなかった。髪の毛フサフサの慶應高校が甲子園で優勝した夏、草の世界の甲子園では雑草魂が炸裂していたのである。彼らのたくましさは嫌いじゃないが、雨の後は30センチくらい一気に伸びていたりする者もおり、成長痛が心配になるほどだった。

抜いても抜いても草が生い茂り、こんもりした。遠くから見ると、イラストやさんのイラストみたいな、かたまりの山に見えた。やがて「これはこういうものとして、ほっといて良い」という聖諦の境地に達した。

と、暑かった夏を振り返りつつ、鎌を参拝者に向けないように気をつけて歩き、ほどなく現場に着。

おおおおお。
石玉垣ゾーンに辿り着くと、3分の1ほどが、すでに草引きしてあった。

そういえば一ヶ月ほど前、まだめちゃ暑かった頃から夕方遅くに一人のほっかむりをしたおばちゃんが黙々と境内の草引きをし始めた。三日ほど前から姿を見ないな〜と思っていたら、こっちに来ていたのか! うう。

驚いたことに、その草引きしてある部分、見事に、草ひとつ生えていない。
草を引いているんだから当たり前じゃないかと言われそうだが、本当に一本も残らず、根こそぎ抜かれている。だんごむしも、みみずもいない。小さな美しい荒野である。そして、草が残っている3分の2のゾーンとの境目がくっきりしている。視力の悪い私には、もはや「あつまれ! どうぶつの森」のような仮想空間で、草がかたまりでシュポッ、シュポッと抜かれたように見える。

ここで私には二つの選択肢があった。
1、残りの3分の2の草引きに取り掛かる。
2、ここはほっかむりのおばちゃんに任せて、他の場所を草引きする。

1、の場合、ほっかむりのおばちゃんの完璧な仕事を引き継がねばならない。私にその自信はない。

というわけで、2を選択し、境内の参道の脇にしつこく生えている短い雑草を抜くことにした。ほっかむりのおばちゃんの仕事に触発されて、とにかく10センチ四方を完璧に荒野にしてから進むという方法を繰り返した。とても充実感があった。

本来は怠惰な私が、掃除や草引きのモチベーションを上げる時にする方法が三つある。ひとつ目は村上春樹の「午後の最後の芝生」という小説を読むこと。草刈りのアルバイトをする大学生が主人公の短編で、草刈りをする描写がパスタを茹でる描写と同じように書いてある。春樹を読んでパスタ食べたくなるのと同じように草刈りしたくなるという効果がある。「中国行きのスロウボート」という短編集に入っている。

ふたつ目は、島根県の足立美術館の庭園の写真を見ること。ここは本当に仮想空間みたいに完璧に手入れされていて、感嘆してしまう。ネットで検索して誰がどの時期に行って写した写真を見ても、季節の移り変わりはあれど、手入れはいつも完璧なのである。きっとプロの庭師たちがチームになって管理をしているはずだ。ここを目指しても同じようにはできないだろうが、とにかく今すぐにでも竹箒を持って外に出たくなるのである。

三つ目は、阪神園芸さんの甲子園整備の動画を見ること。雨シートを多数の人力で剥がすと姿を現す、めっちゃ美しい黒土。これを見ると草引きへのモチベーションが上がる。

以上、個人の感想でした。














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