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HSPはナルシシストなのか?

身も蓋もない話が大好物な皆さんこんにちは、津島結武です。
今回は前回に引き続き、HSPの身も蓋もない話です。
どうやら、HSPとナルシシストには類似する点があるようです。

Jauk, E., Knödler, M., Frenzel, J., & Kanske, P. (2023). Do highly sensitive persons display hypersensitive narcissism? Similarities and differences in the nomological networks of sensory processing sensitivity and vulnerable narcissism. Journal of Clinical Psychology, 79(1), 228-254.

前回の記事はこちら👇

背景

今回紹介する研究は、感覚処理過敏(SPS)と脆弱性ナルシシズムの類似点と相違点を探る研究論文です。
SPSは、刺激処理の深度が高まり、過度の刺激を受けやすいという性格特性です。
これが高いと俗に言う「HSP」と呼ばれる人になります。
脆弱性ナルシシズムは、自意識過剰、反応性、密かな自己顕示欲を伴う性格スタイルです。
研究者らは、SPSと脆弱性ナルシズムは、特に過敏性と興奮しやすいという側面において、実質的に関連する構成概念であろうと仮定しました。

方法

研究者らは、ドイツと英国の便宜的かつ代表的なサンプル(n1=280、n2=310)を用いて2つの研究を実施しました。
SPSはHighly Sensitive Person Scale(HSPS)、過敏性ナルシズムはHypersensitive Narcissism Scale(HSNS)、脆弱性ナルシズムはPathological Narcissism Inventory(PNI)を用いて測定しました。
また、ビッグファイブ性格特性、自尊感情、権利意識、症状負荷などの他の変数も評価しました。

権利意識:自分が獲得したものではないものに対して、自分は特権や評価を受けるに値するという信念に基づく性格特性

相関、因子分析、潜在クラス分析を用いて、SPSとナルシシズムの間の関連と共有される名辞的ネットワークを検討しました。

結果

その結果、神経症傾向でコントロールした後でも、SPSは過敏性ナルシシズム(.53≦r≦.54)および脆弱性ナルシシズム(.44≦r≦.54)と正の相関があることが示されました。
SPSの興奮しやすさ(EOE)因子はナルシシズムと最も強い関連を示し、権利怒りのような誇大な側面も含まれていました

権利怒り:権利意識を持つ人が示す激しい怒りや攻撃性を表す言葉

SPSの美的感受性(AES)因子は、誇大性ナルシシズムとの関連は弱いが有意な関連を示しました。
因子分析では、SPSとナルシシズム尺度の間に共通因子は認められず、弁別的妥当性が示唆されました。
潜在クラス分析の結果、SPSとナルシシズムのレベルが異なる3つのクラスが同定されました。
・低SPS/低ナルシシズム
・高SPS/高過敏性ナルシシズム
・中程度SPS/中程度脆弱性ナルシシズム。

考察

研究者らは、SPSと過敏性/脆弱性ナルシシズムは実質的に関連した構成概念であるが、同一ではない、と結論付けています。
彼らは、臨床家は高感受性を呈する人の自己愛的な自己調整戦略に注意を払うべきであると示唆しました。
彼らはまた、SPSとナルシシズムの進化的、生物学的、心理学的基盤を理解するための知見の意味についても議論しました。
彼らは、自己報告式測定法の使用、横断的デザイン、SPSとナルシシズムの客観的指標の欠如など、研究のいくつかの限界を認めました。
彼らは、基礎的な過程と結果におけるこれらの構成要素間の潜在的な重複に関するさらなる研究を求めました。


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