見出し画像

【レビュー】正体隠匿+バッティングの独特なプレー感 / 目を引く棺桶型パッケージ 『天姫世紀/Vampire Saga/バンパイアサガ』

※本記事は有料に設定しておりますが、全文無料で公開しております。お気に召しましたらぜひご購入くださいませ。

タイトル:天姫世紀/Vampire Saga/バンパイアサガ
パブリッシャー:栢竜玩具(Broadway Toys)
プレー人数:2~8人
プレー時間:40分
ゲーム背景:
バンパイアと人間が学校で聖戦を繰り広げる! どちらの陣営が勝利を収められるだろうか。

--------------------------------------------------------------------------------------

人間だれしも二面性を持ち合わせているものである。完全なる善人がめったにいないように、完全なる悪人というのもそれほどいない。ネコ好きを公言している人だってイヌに心が揺らぐこともあろう。ついでに言えば私はたけのこ派だが、きのこを認める広い心も持っている。了見の狭いきのこの皆様とは違うのだ。

この香港製のゲーム『バンパイアサガ』も、プレーヤーの二面性が表れるゲームである。二面性といっても、プレーヤーの性格の話ではない。身分に二面性があるのだ。

このゲームには2種類の身分がある。一つが赤色のバンパイア、もう一つが青色の人間だ。各プレーヤーにはセットアップ時にこのカードが3枚ずつ配られる。

受け取った身分カードのうち、バンパイアのカードの枚数が多ければバンパイア陣営、人間のカードの枚数が多ければ人間陣営ということになる。1人脱落者が出た時点で、その脱落者の属する陣営の全員が敗北となる。

各プレーヤーが受け取った陣営カードはこのように各自の前に伏せておく。ゲーム中、このカードは1枚ずつ、他のプレーヤーによってこっそり見られたり、攻撃を受けて表向きになったりする。相手に見られたカードが青色のカードであれば、バンパイア陣営であるにもかかわらず人間陣営であると勘違いしてくれるかもしれない。逆に、他人のカードを見た結果が赤色のカードだったとして、果たしてその人はバンパイア陣営なのだろうかと頭を悩ませることになる。

さて、問題はどうすれば相手のカードを見たり、相手に攻撃したりできるかだ。ここでは、バッティングのシステムを使う。

セットアップ時に、テーブルの真ん中にこのように3枚の部屋カードが配置されている。その下には爆弾カードを並べる。爆弾カードには黒か白のいずれかの爆弾が1~3個描かれている。また、各プレーヤーには、各場所に対応する次のカードが1枚ずつ配られている。

このゲームでは、ターンは時計回りに回るのだが、各ターンの開始時、手番プレーヤーと他のプレーヤーは同時に部屋を1か所選ぶ。手番プレーヤーは、同じ場所を選んだ相手を対象として、アクションと攻撃を行うことができる。

実行できるアクションは選んだ部屋によって異なる。

音楽室:同部屋内の誰かが持っている爆弾を、同部屋内の1人に移動させる。
体育館:同部屋内の誰かの身分カードを秘密裏に1枚見る。
教室:同部屋内の誰かの身分カードを秘密裏に2枚見る。

アクション実行後、部屋カードの下に並べられている爆弾を同部屋の誰かの身分カード1枚の上に並べる。これが攻撃に相当する。

爆弾は、1枚の身分カードの上に同色のものが3個溜まると爆発し、そのカードが公開される。

カードに書かれている数字が、そのカードを持つプレーヤーへのダメージで、合計9ポイントのダメージを受けるとそのプレーヤーは脱落する。数字は3・4・5のいずれかなので、2枚公開されただけでは脱落しないこともあるが、3枚公開されると必ず脱落する。

カードを2枚見られる教室のアクションは明らかに体育館より強力なので、手番プレーヤーとしてはできれば教室を選びたいところだが、誰ともバッティングしなければ誰のカードも見られない。また、部屋を選んだのが手番プレーヤー一人だけだった場合、その部屋の爆弾は自分で引き取らなければならない。一方、他のプレーヤーは、爆弾の数と色の兼ね合いで、絶対に選びたくない部屋が出て来ることだろう。逆に、相手に自分の情報を渡したいのでむしろバッティングしたいという場面だってあるかもしれない。全員がそれらの状況を勘案して心理戦を繰り広げることになる。

一見すると他者の属する陣営に関する情報を得るのが難しそうなのだが、AさんはBさんの陣営の見当がついているはずで、Bさんを攻撃しているということは敵同士なのだろうか……などと考えると意外と当たりを付けられる。しかしながら、ボヤっとした情報を元に決断を迫られる場面も当然あり、そういう局面でギャンブルを打つのか石橋を叩くのかは各人のプレースタイル次第である。

このゲームには、人数が少ないとバッティングしづらいといった粗はある。そもそも、バッティングというシステム自体が好きではないという方も熟練のゲーマーを中心に多いだろう。しかし、正体隠匿とバッティングを組み合わせたシステムにはオリジナリティーがある。相手の身分の二面性に悩まされる体験が楽しい。

余談

・棺桶型のパッケージが特徴的だが、目を引くのはいいものの、中身は長方形のカードと説明書なので、内容物の収まりが悪い上に説明書の文字が小さい。フォトジェニックさの代償である。

・拡張ルールとして、特殊効果のあるキャラクターを1人に1枚ずつ配るというものがある。日本語が書かれているが、結構怪しい。

--------------------------------------------------------------------------------------

マガジン「中華卓上遊戯情報部」では、中華圏(主に大陸中国・香港・台湾)のボードゲーム情報をお伝えしています。マガジンのフォロー、記事へのスキ、SNSへのシェア、サポートなどよろしくお願いします。

ここから先は

0字

¥ 100

ノートに「スキ」をしていただくと、あるボードゲームの中国語タイトルと、それに対応する日本語タイトルが表示されます。全10種類。君の好きなあのゲームはあるかな?