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アドテクの理想と現実 ~現場発のマーケターが考えるデジタル広告の未来(前編)~

いまやマーケティングにおいてアドテクはなくてはならない存在。日々技術が進化する中で、マーケターもデータやテクノロジーの知見は必要不可欠です。
今回話を聞いたのは、運用型広告のオペレーターから戦略立案まで経験し、現在はアルファアーキテクト株式会社の執行役員である高橋伴幸氏。幅広くデジタル広告に携わったことで感じたアドテクの理想と現実、そして未来を語ります。


プロフィール:高橋 伴幸
アルファアーキテクト株式会社執行役員。
2008年、新卒で全日本空輸株式会社に就職。経営企画でサイト解析に携わったことがきっかけとなり、30歳でデジタル広告業界に。株式会社エスワンオーインタラクティブ(現:株式会社ハートラス)で、オペレーション運用に従事し、株式会社ネクステッジ電通へ入社。株式会社電通デジタルへの統合を経て、株式会社博報堂へ入社。デジタル広告の戦略立案を経験し、2020年4月から現職へ。
聞き手:木本考紀 写真:きるけ。 構成:菱山恵巳子

これからの広告運用者にはプランナー要素が必要

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── まずは簡単にこれまでのご経歴を教えてください。

新卒で就職した全日空でサイト解析に携わったことがきっかけで、30歳からデジタル広告業界に来ました。

僕の広告業界でのキャリアステップは、いわゆる現場から。
エスワンオーインタラクティブ(現:株式会社ハートラス)で、エグゼキューション(運用型広告における一連のプレセスの実行から管理)のフェーズから入り、電通デジタルで戦術を学び、博報堂ではプロジェクトマネージャーとしてデジタル広告全般の戦略を学んできました。

そしてアドテクに関わる者として、どうしたら人が動くかをテクノロジーで説明するためには、もっと俯瞰した視点が必要だと思い、現職のベンチャー企業マーケティングユニットの執行役員になりました。

── 元々運用型広告の配信設定等、実際に手を動かすオペレーター経験もあり、現在は動画を使った”認知”から”獲得”までの戦略を担当されていますが、幅広くデジタル広告に携わってきた中で、成功事例・失敗事例を教えてください。

運用型広告のキーワードや入札設定などを担当している時代に、目的と手段をはき違え「このテクノロジーでどう人が動くか」という提案をしてこなかったことが個人的な失敗ではあります。

運用型広告の成功と失敗の分かれ目は、CPA(コンバージョン単価)が合うか合わないかだけじゃないですか。これはもはや成功・失敗というよりも発見でしかない。本来CPAはテクノロジーで人が動いたかの指標であり「人を動かすためにこのテクノロジーが必要です」という提案のための材料です。つまりマーケティング視点だとCPAはあくまで手段です。

しかしデジタル広告におけるオペレーターや運用トレーダーはKPIを設定し、CPAを合わせることを目的としています。組織上の問題で、その役割しか持たされてないというのはありますが、アドテクが詳しい人ほどテクノロジーを推してしまって提案時に売れない現象が起こる。ぼくも前職のハートラスと電通デジタルに居た頃には「このパーツが当てはまってないからこのテクノロジーいれましょう」と、DSPやDMPを提案してきました。でもそれでは広告主に刺さらない。

── たしかに自分が定めたKPIを達成したら成功と言えるけど、そもそもKPI自体の先のお客様のマーケティング課題が見えていなければ失敗じゃないかと。そこに気付いている人は少なそうですよね。

だから今こそ「常識を疑え」だと思っていて。今やっていることは何のためにやっているのかを追求して本質を語れないと運用型広告は廃れていきますよね。

── 運用型広告のテクノロジーは日進月歩で開発されるじゃないですか。ぼくが思うに、テクノロジーが進化しすぎて、それを使いこなせない人が圧倒的に多いのではと感じるのですが、どう思いますか?

まさにそうだと思います。Googleはすでに運用も全てAIに任せています。今までは検索数がどれだけ少ない検索クエリでもレポートが出ていましたが、今後は検索数が多いクエリしかレポートに表示しないんですって。つまり『運用は全部Googleに任せてね』ということです。

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