うつ病なので職場異動が望ましいという診断書
あまり、こんな事を書いてあるのを見たことがありませんが、書いておきます。
「産業保健は労働契約の上に成り立っている」
ということです。これが理解できていない人が多いようです。
ある会社で、社員が上司に「うつ病なので職場異動が望ましい」という内容の診断書を提出しました。事前には何の相談もありません。
実は、このようなケースは10年ほど前からいろいろな契約企業で相談を受けます。
この場合の対処ですが、「労働契約上、どの社員をどこに異動させるかは会社が決めることで、例え医師の診断書があったとしても会社が決めることには従ってもらう」と社員に言い切ることが大切です。
では、ちょっと詳しく説明しましょう。
まず、考えてみて下さい。同じことを3割の社員がやって、それの通りに会社が対応したら会社の秩序は保てません。また、ひとりのこのような申し出にもしも会社が対応してしまったら、「どうも、医者の診断書で『異動が望ましい』と書いてもらったら、異動できるみたいだぞ」と会社内にうわさが拡がっては当然のことながらよろしくありません。
このような診断書を提出する社員はどうすれば良かったかということですが、やはり上司や人事に何が耐え難いストレスとなっているかを相談するべきです。その内容を考慮して会社は対応を検討します。
昔からよくある話で、交替勤務の求人があってそれに応募して働き出したけれど、2年働いてみて交替勤務のように睡眠時間帯が一定しない生活は自分には無理だと思った場合、上司に申し出て、会社の交代勤務者を減らしたいというタイミングであれば希望が叶うかも知れませんが、場合によっては退職するしかないということも起こりえます。
産業医として相談されたときには睡眠の取り方について説明する一方で、「結局、労働契約の話だから相談されても困る」と言い切る場合もあります。背景には「産業医の意見で、この労働者は交替勤務は向かない」と言えば、会社が自分の希望を叶えてくれるんじゃないかと思っている場合があります。
また、診断書を提出するという行為は、「自分が言っているのではありません。医者がこう言っているんです」ということをやんわりと主張されたいのでしょうが、ある意味、会社としては迷惑な行為です。
一方で、主治医からするとこう書かないと患者が離れるかも知れないと思うのと、患者のストレスが職場環境にあれば、そこをなんとか改善しなければいけませんし、「望ましい」のは事実でしょうから患者から望まれればそのような診断書を書く医者もいるでしょう。
このような事情が分かっていない会社では今でも「うつ病なので職場異動が望ましい」という診断書が提出され、受け取った会社がどう対応するか悩むケースが後を絶たないのでしょう。
私、新入社員メンタルヘルス教育では必ず「この行為は非常識です。耐え難いストレスがあれば、上司や人事に申し出て下さい」とお知らせしております。
産業保健は労働契約の上に成り立ってます。
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