柴田敏雄展|DAY FOR NIGHT


《福島県安達郡本宮町五百川 1987年》©Toshio Shibata

2023年9月2日から、POETIC SCAPEでは初となる柴田敏雄の個展「DAY FOR NIGHT」を開催します。

柴田敏雄は1974年に東京藝術大学大学院(油画)を卒業した後、約1年間映画制作会社で働きました。しかし作品制作への情熱を捨てることができず、1975年にベルギーのゲントにある王立アカデミーに留学します。最初は東京藝術大学在学中から実践していた版画の研鑽を目指していましたが、アカデミーの勧めもあり新設されたばかりの写真科に入学し、真剣に写真を始めることになります。

そして、4年後の1979年、留学から帰国した柴田は、4x5インチの大判カメラを用いて夜の風景写真を撮り始めました。

 「ベルギーからの帰国後、日本で真剣に写真に向き合おうとしたのですが、当時の日本の景色は、それまで4年ほどいたフランドル地方のそれとあまりにも違い、その雑多な感じに強い戸惑いを覚えていました。しかし夜になると昼間の喧騒も消え、必要なところだけに明かりがある様や、特に高速道路などは世界中共通でおもしろいと感じました。」(本展開催にあたり当時を振り返って。以降の引用も同様)

柴田は自分の撮影対象を早く見つけたいという思いから、夜の写真と並行して昼間の写真にも取り組み始めます。すでに評価の定まったものや美しい風景などではなく、一般的にはフォトジェニックとは見なされていない、ありふれたものを被写体とした作品を模索していきます。その過程でダム建設予定地の近くの道路の向こうに見えたコンクリートの構築物(神奈川県愛甲郡清川村宮ヶ瀬、1983年)を撮影したことで、ようやく撮影すべき対象が見つかったと感じます。手ごたえを得た柴田はその後も撮影を続け、1988年には8x10インチのカメラを使用した撮影に移行、1992年には柴田の代表作となる「日本典型」を発表しました。

 「何か新しいことをしたい、という思いから作家を目指し、それまで色々なメディアを試してきました。日本で写真を撮るにあたって、これまでの伝統的な物の見方を踏襲しないこと、そして、それまでに無かったようなイメージ、空間を作り出すことを強く意識しました。」

柴田が1980年から1988年にかけて撮影した夜の写真と昼の写真が、約35年の歳月を経て、ロサンゼルスの出版社 DEADBEAT CLUBによって1冊の写真集「DAY FOR NIGHT」にまとめられました。今や日本を代表する写真家となった柴田ですが、彼が若き日に独自の写真表現を模索しながら制作した作品は、世代を超え、現在でも新鮮な魅力を備えています。

本展では、当時の撮影に使用された4x5インチのネガから制作されたコンタクトプリントを中心に、その時代に作成された貴重なビンテージプリントも併せて展示いたします。

<関連イベント>
ギャラリートーク:柴田敏雄 × 河内タカ
日時:2023年9月16日(土)18:00-19:30|会場:POETIC SCAPE|要予約、定員20名
参加費:1000円(トーク終了後ミニパーティあり)
お申込はメール(front-desk@poetic-scape.com)にて、参加者の氏名、人数、お電話番号をお知らせ下さい。
*メールでのお申込み後、3日以内に返事がない場合は、お手数ですがお電話(03-6479-6927)にてご確認ください。

<Profile>
柴田敏雄 (Toshio Shibata)
1949年東京生まれ。東京藝術大学大学院油画専攻修了後、ベルギーのゲント市王立アカデミー写真科に入り、写真を本格的に始める。日本各地のダムやコンクリート擁壁などの構造物のある風景を大型カメラで撮影、精緻なモノクロプリントで発表、2000年代よりカラーの作品にも取り組み始め、その表現の領域を広げる。国内外多数の美術館に作品が収蔵されている。


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