見出し画像

LOOP/ループ-時に囚われた男-(2016年/ハンガリー) ネタバレあり感想 ループの起点が主人公以外にあるという個性と面白さを、難解さがぶっ殺してしまった作品。

※2019/1/8に『趣味と向き合う日々』で投稿した感想記事の加筆修正版です。


ループ物の作品は結構好きでよく観ている方だと思っていたので、時系列やらなんやらの脳内整理には慣れていたはずなんですが、この映画はちょっと難易度が高すぎました。


『LOOP/ループ-時に囚われた男-』

(Hurok)

ループ時に囚われた~映画ポス

以下、ネタバレを含む感想記事です。


■ストーリー
 

主人公アダムが恋人を死の無限ループから救い出そうとするうちにまともな大人に成長する。


■感想
 

主人公の視点でループの起点が描かれたりするのが一般的かと思うんですが、この映画は主人公の恋人がループの起点になってました。

そのため、ふと気が付いたら同じ場面がまた繰り返されますし、主人公が生存した時空と死亡した時空が重なっちゃったりとかが普通に起きます。

恋人の死と復活が起点でループしている世界なので、主人公アダムが生きようが死のうがお構いなしという尖り方で攻めているタイプの映画。

 

例えばアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』も主人公以外のキャラクターが世界を繰り返してますが(まどかはそもそも主人公要素薄いんで例にし辛いです)、まどかは視聴者の目線からは繰り返された部分も含めて一本のストーリーラインとしてちゃんと理解できる作りになっています。

でも、この映画は主人公以外のキャラクターが起点でループする上に、そのループが生んだストーリーラインが更に同軸時間で同時に展開されるので、これがややこしさに拍車をかける感じでした。



序盤の方で伏線っぽい意味深な描写はある程度まとめて出しておいて、それらの場面を周回した時間軸の中で回収するというループ物の醍醐味みたいな要素はしっかり構えています。

ただ、これがあまり盛り上がらないというか、ループしている世界の中で、少しずつ主人公が先にイベントを進めている事を示すだけの要素に留まっていたように思います。

 

例えば、主人公が階段の踊り場にばら撒かれた消火剤と布きれを発見するシーン。

これは彼の恋人が襲われて暴れ回った痕跡である事が後に判明します。

ただ、それでおしまいって感じで、それが物語上重要なキッカケや次の展開への鍵になるとかそういう事が無く、ただ繰り返しを印象付ける為の一要素に終始するような感じになっていたと思います。

そこが良くも悪くも尖ってる映画だなっていう印象に繋がりました。王道もやるけど王道に媚びない姿勢みたいな。



そもそもループの起点がとてつもなく分かりずらいんですよねこの映画。

その分かり辛さが、序盤中盤の「あれなんかこれ繰り返されてない?」みたいな気づきの面白さに繋がるのは間違いないんですが、それにしてもこっそり繰り返しすぎだと思いました。なにをそんな恥ずかしがってループしてるのか。

主人公アダムは恋人アンナが死んでしまうとウワーンって感じで悲しみながら自室に向かったり病院に向かったりするんですが、そこには何故か死んだはずのアンナの姿があり、そうこうしている内にまた以前見たような場面に突入するという流れになります。

そんなしれっと繰り返される日常にちょっとびっくりするくらいで、すぐに身体を馴染ませていくアダムには中々に違和感を覚えます。

 世界が繰り返した事を明確に示すシーンは一度しかありません。

中盤辺りの、アダムが鏡を眺めている内に、日当たりが急に変わり部屋が"イベント発生前"の状態にいつの間にか戻っているというシーンです。

これ以外はマジでヌルッと時間の直線上に繰り返しのタイミングが配置されてました。


 

その結果、映画のラストの方では、恋人アンナを見捨てた時間軸のアダムVS恋人アンナと添い遂げる時間軸のアダムという、自分との殺し合いが発生します。

ループとかタイムパラドックスとかパラレルワールドとかを題材にした物語って、「別時空の自分と接触するな」みたいなタブーがよく登場するんですけど、この映画は接触した上で殺すっていうダイナミックはなはだしい予想外のクライマックスを迎えました。

この意外性は正直個人的にはかなり楽しめた部分で、複数の主人公が同軸時間上に存在してしまうという、この映画の構造上の仕様で上手く最後に一番尖った一撃を組み込んできたなって思います。

 

そんな感じの映画なのでいろいろと個性的な部分が目立つ作風ですが、登場人物の各周回ごとの行動や展開がどんどん重なっていく事で、何が起きてどう繋がるのかが把握しづらい、難解さが際立った映画という印象を受けました。

 

■〆
 

個人評価:★★★☆☆

それにしたって物語序盤のアダムがバカすぎます。

映画的な、脚本都合でIQが下がるような、ホラー映画でよく見るタイプのバカとは違って、本当にキャラクターとしてそもそもバカでした。

ループする世界の中で彼の成長を描く為とは言え、知能レベル下げ過ぎてる感あります。そのわりにループに気づいた時とかに謎に冷静に適応してるし。

そういうキャラクターの違和感もちょっと目に付く印象です。


ではまた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?