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俺たちポップスター(2016年/アメリカ) ネタバレあり感想 架空のトップスターを褒め狂うフェイクドキュメンタリー。

※2020/1/23に【趣味と向き合う日々】に投稿した感想記事の加筆修正版です。


 モキュメンタリー形式のコメディ映画。

 

『俺たちポップスター』

(POPSTAR:NEVER STOP NEVER STOPPING)

俺たちポップスター


以下、ネタバレを含む感想記事です。

 

■ストーリー


かつて一世を風靡したヒップホップグループからソロデビューした男が、人気が出過ぎて狂いはじめ、身内からドン引かれる。

 

 

■感想


 

大真面目にバカな事が起こる空間の面白さ、本当にあり得そうでやっぱり有り得ないような絶妙なラインを攻めるコメディ映画です。

架空の人気グループ”スタイルボーイズ”が世のアーティストに与えた影響と、メンバーの一人でソロデビューを果たしトップスターとなったコナーの姿を追うドキュメンタリー形式で話が進みます。


とにかくスタイルボーイズが無条件に崇められまくるのが面白いです。

スタイルボーイズやコナー(ソロデビュー後はCONNER 4 REALという名前)の楽曲は、絶妙にふざけつつも曲のクオリティ自体は決して悪くない、時代感やトレンドも意識したしっかりしたオリジナル楽曲が多数登場します。

コメディらしい悪ふざけと、モキュメンタリーとしてのリアリティのバランスが絶妙すぎて驚きました。

 現実に居る事が前提の架空のグループという事で、それなりに意味不明なバックグラウンドが至極まじめに描かれたりする点も面白くて好きです。

 

劇中ではそんなスタイルボーイズに影響を受けた有名アーティストとしてNASやアッシャー、50セント等がインタビューを受ける形で登場し、彼らをひたすら絶賛していました。真顔でよくやれる。

インタビューがどれも本当に面白いです。

リンゴ・スターすら彼らを無条件に絶賛するインタビュー映像は必見。

 


ソロデビューが大成功し、スタイルボーイズ時代を超える程のトップスターとなったコナーの周囲には殆どイエスマンしか居ない状態に。

そうしてコナーは次第に、スタイルボーイズの元メンバーで現在はDJを任せているオーエンに対する無茶ぶりを始め暴走を繰り返し、大ヒットした1stアルバムに対して2ndアルバムはレビューサイトで10点中マイナス4点や星〇個中うんこのEMOJI1点といった異次元の評価を叩き出し、転落が始まります。

オーエンのDJという役柄がひたすらに皮肉の塊って感じで凄いです。

トラックを流すのはipodで、仰々しく並べた機材の数々は一切いじらない露骨なグループ内DJ像が描かれ笑えます。

お飾り以下の立場になってしまったという事を、現代の音楽グループの後ろにいる系DJに対する皮肉を絡めて演出、皆それは思ってても言わなかったのに。

 

転落した後のコナーはスタイルボーイズと仲直りし、最後はテイラースイフトが殺人で捕まった事で空いたビッグステージの枠に出演する事で、三人はグループとしてトップアーティストに返り咲きハッピーエンド。

様々な小ネタを挟み続け笑いを維持しつつ、逆境を乗り越える主人公の物語をしれっと描き切っていました。

 

昔のように音楽をやる事を楽しめなくなっていたコナーが、仲違いしていたローレンスと仲直りし、スタイルボーイズの三人で音楽活動を再開することになる終盤はコメディ要素よりも人間ドラマ要素が一気に前に出てきます。

特に彼らの復帰ステージのシーンではそれまでと一転してコメディを排除し、三人のステージを見せる一点に集中します。この演出の切り替わり方は凄く良かったです。

コメディ映画のクライマックスなので笑いを絡めたい部分だと思うんですが、この映画はあくまで三人のステージに基点を置いていました。

 コメディ映画を観ていたはずなのに、最後は高揚感と感動に包まれる不思議な作品です。

 


スタイルボーイズの元ネタはBeasty Boysなんでしょうか。白人のヒップホップ"バンド"グループと形容されてますし。少なくともHouse of Painとかハーコー寄りの白人ヒップホップグループではないはず。

何曲かYouTubeで聴けるものを貼ります。

 

 

■〆


個人評価:★★★☆☆

モキュメンタリー形式が功を奏しているのか、馬鹿らしい出来事や小ネタを至極真剣にリアルなものとして受け止め、やっぱ有り得ないわこれって思い直す、独特の面白さが体験できる映画です。

でもコナーが最期にスタイルボーイズと仲直りし、昔のように楽しく音楽活動を再開するという流れで全て許せてしまう謎の構成力。

コメディ映画ですがドラマの質も高いです。良い映画でした。

ではまた。



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