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グッド・ネイバー(2016年/アメリカ)感想 サイコ野郎はどっちだ!?



衝撃のラストと想定外のメッセージ性に脳が追い付かない!


〘グッドネイバー〙

(THE GOOD NEIGHBOR)

グッドネイバーポス

画像引用元:アマゾンプライムビデオ https://www.amazon.co.jp/

以下、一部にネタバレを含む感想記事です。



■ストーリー

キッズ2人が近所に住む偏屈爺さんを相手にドッキリ的心理実験的な事を仕掛けた結果、悲しい事がたくさん起きてしまう。

■内容

パッケージから受ける印象は結構面白そうなサイコスリラー、本編序盤から中盤にかけても色々な仕掛けでその雰囲気をジワジワ作り上げてくれます。

その流れに身を任せて観進めていけば、この映画の後半以降の展開は色々な意味で衝撃的でした。


一見すればキッズ共の悪ふざけの対象になった偏屈ジジイの動向と違和感を視聴者サイドもろとも楽しむような映画に思えて、しかし最後まで観進めると全く別の要素やメッセージが表面化してくる点も面白いと思いました。



■感想(ネタバレあり)


これ実は、加害者が真正のナチュラルサイコ人間だったとしても、それが子供なら少年法的なもので守られてしまうというシステムに対する不満と疑問を描いた映画だったりしませんか?


2人のキッズがバカな心霊ドッキリを実験と称して近所に住むじいさんに仕掛けるという大枠と、ジャケットやポスターで大々的に匂わせているサイコジジイ風味が効いているのはせいぜい中盤辺りまででした。

そもそもじいさんの狂ったような行動の数々が悉く理解できるというか、変な話このじいさんがキッズ共が言うような偏屈で意地悪な人間には絶対に思えないような描かれ方すらしていた気がします。

結構早めの段階でじいさんと妻の回想シーンが登場したり、じいさんの悪口を言うのはキッズ共だけだったり、そういった演出の数々でこのじいさんがシンプルにただ当てつけのように悪ガキに狙われただけ、という根本のオチに繋がる部分が分かりやすくなっていると思いました。


そんなわけで、早々にキッズ二人組の悪ふざけに巻き込まれた老人の悲劇を予感させるような映画なわけで、実際に最後はキッズ共の悪戯のせいで老人が自殺してしまう結末を迎えました。なんかもうホント、特にロングヘアの方のキッズがあまりにも頭悪すぎますよね。


キッズ共が仕掛けた心霊ドッキリの数々が老人に、妻と過ごした過去を次々フラッシュバックさせ、それらが偶然の一致でどんどん老人の中で一つに繋がっていくという構図。

その偶然の一致があまりにも老人の思い出とピンポイントマッチしすぎている、と思いがちですがそうでは無く、それだけ老人の中に妻の思い出がたくさん残っていて、そんな記憶とキッズ共の悪戯によって起こる怪奇現象を紐付けしてしまうということなんでしょう。どんな形であれこういうフラッシュバックって本当にキツイものがあるんですよね。

ドッキリされてる事を知らない老人は当然その怪奇現象の数々が妻との思い出と直結している物ばかりに思える為、最終的には妻の元へ旅立つように拳銃自殺してしまうんですが、ホントもうあまりにも切なすぎます。



ちょっとふわっとした感想になっている事には理由があります。

あまりにもロン毛の方のキッズがゴミ人間過ぎて多くの感情リソースがこのガキに対するヘイトに割かれちゃうんですよ。僕だけかもしれないですが。

口を開けばわがまま連発、自分の落ち度は決して認めず、ただひたすらに他者から注目を浴びたいと渇望するロン毛キッズ。

彼らの年齢設定的に(10代半ば辺り?)それはそれでありがちな精神構造だとは思うんですが、重要なのがそんなクソ野郎ロン毛キッズが、事件を通じて反省したり学びを得たり、といった方向へは進まず、最後の最後までクソのままでこの映画が終わるという衝撃の構成に在ります。


この手の、若気の至りで大惨事系の物語って、ほぼほぼ最終的に仕掛けた側の猛省や後悔という形式で物語を着地させる事が多い訳ですよ、ポジティブにしろネガティブにしろ、登場人物の変化や成長というのは殆どの場合、物語とイコールと言っても良いくらい大切なイベントであるはずです。

ロン毛キッズはその辺りの一切を切り捨てたキャラクター造形が成されていて驚きます。

相方のナードっぽい男の子はそうでも無くそれなりに自制心や良識もあり、裁判後のラストシーンからも加害者の自覚が感じられるような描かれ方をしてる辺り、間違いなくロン毛のそれは意図的な演出なのですが、それにしてもあまりにも人間性が破綻していて引いてしまうレベルなんですよね。

サイコっぽく思われてた老人が実は至極マトモどころかホントは心優しいジェントル爺だったのに対して、無邪気なキッズっぽくキッズらしい度を超えた行動を何度も繰り返すロン毛キッズが、実は相当なサイコだった、という意外性は見所の一つですが、観ててシンプルに引くのも事実です。


キッズ共が仕掛けた隠しカメラや定点カメラの映像と、それ以外の演出のハイブリッド構造という点は個性的で、この映画の設定や時系列シャッフルともうまくかみ合っていて面白いと思いました。




■〆

個人評価:★★★☆☆

子供なら何してもチャンスは残される、という性善説的な考え方にちょっと疑問を呈するような、そんな最終的なメッセージ性を感じなくも無い映画でした。あくまで僕の解釈ですが。

キッズが老人に悪戯を仕掛ける、という単純すぎる始点からここに着地する映画って中々ぶっ飛んでる気がします。

ではまた。

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