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トランス・ワールド(2011年/アメリカ) ネタバレあり感想 シチュエーション自体の謎は明かされないのになんかスッキリ観れる映画。

 ※19/5/31に『趣味と向き合う日々』で投稿した感想記事の加筆修正版です。


いわゆるシチュエーション先行型スリラー。

 

『トランス・ワールド』

(Enter Nowhere)

トランスワールド映画ポス

以下、ネタバレを含む感想記事です。


■ストーリー
 

パックマン的な構造の、ちょっと過去世界を匂わす系異空間に集まった男女が脱出する為力を合わせる。

 

■感想
 

 

壊れた無線と簡易的なベッドだけが設置された空き家に、それぞれ異なるトラブルに見舞われ彷徨っていた三人の男女が集まります。

トムは自動車の運転を見誤り自動車が故障してしまった為に、森を彷徨い歩くに空き家へ。

サマンサはガス欠になった車にガソリンを入れる為どこかへ向かった夫を探すうちに空き家へやってきます。

そしてジョディは彼氏と喧嘩して置き去りにされ、気が付いたら空き家へとやってきていました。


三人が出会うまでの雰囲気はそれとなくホラーチックでありながらも、この三人のうちの誰か一人が黒幕的な存在なんじゃないかというサスペンス染みた空気も纏っています。

ところが、三人がお互いの身の上を知っていくうち、様々な違和感や会話のズレが頻発し始めてからホラーっぽい雰囲気が薄れ、むしろ「この異空間から出るにはどうしたらいいのか」みたいな方向性の話になるので、掴みと本題の空気がかなり異なっていました。この映画の場合はそれが面白さにちゃんと繋がっていて良かったです。


違和感に繋がる要素は伏線として序盤からかなりの数のものが散りばめられていますが、かなり親切というか、わかりやすいけどワクワクする良い塩梅でした。

この三人は生まれた時代が違い、空き家のある場所もそれぞれ全く違う場所だと思っていた事が判明し、空き家とその周辺が異空間である事がわかります。

パックマンというゲームやエイリアンという映画についてのそれぞれの反応であったり、纏っている衣服に関する認識であったり、そういった部分で別の時代の人間同士である事はずっと匂わせていたので察しの良い人は直ぐに三人の関係性を見抜けるものの、問題は「どうしてこの三人が異空間に閉じ込められたのか」であって、そこから先に更に面白そうな謎を提示する作りは中々丁寧だと思います。

空き家から真っすぐ進み続けるといつの間にかまた空き家に辿り着く(これをジョディはゲームのパックマンのシステムに例えて話していました)のですが、空間がループしている、もしくは閉じた世界になっていて、それが何を意図してどんな目的があるのか、後半はそこが焦点になります。

この「どうやってここから抜け出すか」というところに話の焦点が合ってから更に別の事実を発覚させる展開も面白かったです。

 

この三人、というか更に後からもう一人ドイツ軍人も加わってきて四人になるんですが、四人は全員血が繋がっている事が判明します。

ドイツ軍人であり第二次大戦で命を落とすハンス、その娘がサマンサでありサマンサは出産と共に命を落としてしまいます。

サマンサの子供がジョディで、ジョディもやはり刑務所の中で子を産み、その子は直ぐに施設に預けられそれがトムだった、という事実が発覚してちょっとした盛り上がりが後半にも再び訪れたりします。

 

うまいこと各々が夫々の親と子の顔を知らないようになってるのが映画的に都合良すぎじゃないか感も正直あるんですが、それはそれでシチュエーション先行型ならではの組み込み方ではあると思うのでさほど気になりません。

 


三人は自分が死ぬ瞬間を夢に見ていて、その死を回避する為のアクションを起こす事でこの異空間から出られるんじゃないか?と考えます。

ちなみにハンスは最後の最後まで中々協力してくれないトラブル枠。

それぞれの死の瞬間は不幸なもので、この不幸の原因は何なのかを皆が考えた結果、ハンスが戦争で死んだことに起因しているという事を解き明かします。

 

こうしてようやくこの異空間がなんなのかが明かされるんですね。

つまり、正にハンスが死ぬ瞬間の時代と場所に、子孫の三人がハンスの不幸な結末を避けようとする謎の力によって集められた、という事でした。

 

 

こうしてハンスの死を回避する為に無茶苦茶頑張った三人の子孫のおかげで、無事に歴史が書き換わります。

冒頭の雰囲気からは予測不可能なレベルのまさかのすっきりハッピーエンドでした。

 

やさぐれたジョディが彼氏と共に小売店を襲撃するシーンで始まるこの映画ですが、最後はそのジョディが無茶苦茶清楚な感じで同じ小売店で買い物しているシーンと、慈善家として生涯を閉じたハンスの死をサマンサと共に慈しむシーンで終わります、絵に描いたような綺麗すぎるハッピーエンドが意外すぎ。

 

 

ジョディたちはハンスを救い出す為に飛ばされた空き家の空間の記憶は当然無いのですが、ハンスだけはその出来事を覚えている、というかハンスの時代に三人がタイムスリップしてきたという事だったんでしょうかね。

 

 

■〆
 

個人評価:★★★☆☆

 

 

一族代々不幸な末路を遂げたのがかわいそうだから救済します!という決定を下したであろう謎の意志の存在は判明しません。

世界の意志が働いた的な、そんなふわっとしたもので良いと思います。

これは散りばめられた謎と構造を楽しむ系の映画。

ではまた。


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