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ひとつの本の書評をよみくらべてみる。

発売からひと月がたちまして、
ありがたいことにいくつかの媒体で取り上げられた
『アネモネの姉妹 リコリスの兄弟』(古内一絵 キノブックス刊)
の書評をいくつか、一部分だけピックアップさせていただきます。

そういえば、ひとつの本の書評を見比べてみるというのも、
なかなかないことですね。

【きょうだいなんて、持つもんじゃない?】:山陽新聞デジタル|さんデジ

本書の帯には、こうある。
「兄弟姉妹に一度でも仄暗い感情を抱いたことのあるあなたへ」

そんな人間が、いないはずがないことを、
知り尽くした作り手によるコピーである。

6本の短編からなる本書は、コピーのとおり、
きょうだいに対して複雑な感情——言ってしまえば憎しみ——を抱え、
それを持て余している主人公たちの葛藤を描いている。
 
描かれるきょうだいたちの大抵は、
片方が器用に人生を渡り歩いている(ように見える)一方で、
もう片方がそのことに屈折を感じながら生きている

周囲からは恵まれた優等生とされていた兄や姉は、
そのプレッシャーから自由に羽ばたく弟や妹を羨んでいる。

いつだって親の愛情から阻害されている(と思い込んでいる)弟や妹は、
親の期待を一身に受けて優等生の役割を果たしている兄や姉を羨んでいる

彼らは、きょうだい感情のみならず、
自分の人生における幸せを受け取ることも
きわめて下手である。
そして全部きょうだいと親たちのせいだと思いこんでいる。

自分の人生の不遇の原因を、
過去に置くことほど愚かなことはない。

過去は変えられない。
過去が不幸の原因なのなら、
これからどんなに時間が経とうが、
不幸は変わることがない。

人の人生を左右するのは、「今」でしかない。

6本の短編たちは、そのことを強く説いている。

世界を見渡す自分の眼差しひとつなのだ。
(以下、リンク先で読んでくださいね)



【今週はこれを読め! エンタメ編】兄弟姉妹と花言葉の短編集 - 松井ゆかり

本書の帯には
「兄弟姉妹に一度でも仄暗い感情を
抱いたことのあるあなたへ」

とある。

兄弟姉妹がいれば、
「仄暗い」とまでいかないにしても
一度たりとも衝突したことがないとは考えにくいし、
逆にそうやって互いに成長していけるのが醍醐味ともいえる。

ひとりっ子にはひとりっ子のよさがあるだろうし、
世間でよく言われるように
「きょうだいがいないとかわいそう」といったもの言いには
意味がないと思うけれども、
それでも兄弟姉妹がいなければ
経験できない喜びあるいはつらさというものは
確実に存在する


本書はもちろん兄弟姉妹についての物語であり、
短編集ということで
複数のバリエーションが読者に示されている。

なんだかんだあったけど
最終的には微笑ましいと思えるものから、
今後この登場人物たちはどうなってしまうのか
心配になるようなものまで。

私自身は弟を持つ2人姉弟で、
自分の子どもたちは男子ばかりの3人兄弟。

目次を見るときも、
どうしても「姉弟」や「兄弟」を描いた作品に
目が行ってしまった。

そして、個人的に好きだったのも
「ヒエンソウの兄弟」と「カリフォルニアポピーの義妹」

「ヒエンソウ」は、
6年前に新卒で中堅出版社に入社し、
昨年念願の文芸部に配属された桐生啓二が主人公。

できる限り早く自分の担当作品を世に出したいと、
直近の文学賞選考会に向けて
応募作の下読みに励む毎日を送っている。

啓二は三人兄妹の次男なのだが、
主にクローズアップされるのは長男・祐一との関係性

成績優秀で一家の期待の星であった祐一とは
昔からあまり気が合わず
母や妹の美郷が何かと兄をを立てるのも
おもしろくなかった

祐一は現在家を出て
自分探しの旅に出てしまっているのだが...。

(以下、リンク先で読んでくださいね)




「身近で遠い存在への思い」

本書は、兄弟姉妹に対する葛藤を縦軸に、
花言葉の解釈を横軸にした
6編からなる短編集。

表題の「アネモネの姉妹」「リコリスの兄弟」のほか
兄妹、姉弟、さらに双子や、
義妹
というパターンも。

主人公がツイッターで見つけた「花言葉診断」
自分の名前を入れ、
出てきた花の名と花言葉から
物語が展開するのは同じだが、
あとはそれぞれ独立した作品になっている。

兄弟姉妹というのは、
一番身近で遠い存在だ。
おまけに親の愛情を取り合うライバルともいえる。

6編は、そんな兄弟姉妹だからこそ
抱いてしまう仄暗い感情を、
巧みな心理描写で描きだす。

いずれも、「こうきたか」と意表をつく展開
なかには極端な設定もあるが、
思い当たるふしも多く、
心の底に閉じ込めていた嫉妬や羨望の感情
掘り起こされる。

「同じ環境で育ったのにどうして」
と考えるから余計苦しんでしまうのだろう。

(以下、リンク先で読んでくださいね)


以上です。

改めて、小説の読み方って
100人いたら100通りあるんだなと感じますね。

ただ、この小説に関していうと、
兄弟姉妹がいる人は、
「自分だったらどうだろう・・・」
と置き換えてみたくなるんですよね。

https://www.amazon.co.jp/dp/4909689508/












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