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2023年の出演作品を振り返ってみる話

2023年も今日で終わり。
どうも、後関貴大です。

毎年恒例、一年の出演作品を振り返ってみるコーナーです。ゆっくり書いてたらもう大晦日になってしまいました。師走。
今年は三本。早速参りましょう。



①三匹と三羽 Vol.2『WWW.』

2023年3月23日~3月26日
@シアター711

今年一本目は3月に上演したこの作品でした。
かるがも団地 × 猿博打のコラボ企画「三匹と三羽」。

お話をいただいたのは去年の夏頃。
当時まだTwitterだった現Xで、かるがも団地の宮野ちゃん(宮野風紗音さん)からDMをいただいたのがきっかけでした。
丁度その時期にかるがも団地のオーディションが行われていたのですが、スケジュールの都合上参加できなくて「行きたかったなー」なんてことをスペースで発言してた矢先のお誘い。めちゃくちゃ嬉しかったです。

企画書を読ませてもらうと「平成のインターネット」を描くちょっと暗めの作品とのこと。
この時点で元ニコ厨の血が騒ぎます。
デジタルネイティブ世代として、まだもう少しアングラだった頃のインターネットに憧れと懐かしさを感じ、ワクワクしながら出演することを決めました。

しばらく経って去年の年末、フライヤー撮影で他のキャストの皆様と顔合わせをしました。
久々に見たゲームキューブにテンションが上がり、撮影をしながらみっちゃん(板場充樹くん)にエアスマブラDXごっこを付き合ってもらったりしました。

『WWW.』フライヤー。
ずっとコントローラーガチャガチャしてたので、きっとみんなうるさいなって思ってた気がする。

そして年明け。
稽古が始まり、改めて作品のあらすじを伝えられたとき、僕の役がこの作品において大きな役割を担うことを知りました。

『WWW.』のあらすじをざっくり僕なりにまとめると、

職場でのハラスメントに耐え兼ねていたOL・美知瑠は、自分を救ってくれた古いアニメ映画『ずっとサマータイム』のファンサイトを見つけ、茨城で行われる聖地巡礼のオフ会に参加してみることに。
個性豊かな参加者に囲まれる中、自分と同い歳の青年・土浦と出会い意気投合していく美知瑠。
とあるキッカケから土浦と二人で都内の聖地巡礼をすることになる美知瑠だが、その最中『ずっとサマータイム』の主演声優の訃報が舞い込んでくる。
それを境にファンサイトのBBSに書き込まれ始める「あの死は仕組まれたものだ」という長文の書き込み。
それを書いていたのは他ならぬ土浦本人で……。

というお話。
ご覧になった方には周知の事実ですが、僕が演じていたのは土浦という物語を一番引っ掻き回す人物でした。

作中明らかになるのですが、茨城出身の彼は東北大震災の津波被害で唯一の肉親である父親を亡くしており、それをキッカケにいわゆる陰謀論に傾倒していった人物という設定でした。

初めて座組に参加する自分にこんな重要な役を任せてもらえることへの喜びは勿論ありましたが、それ以上にこの役を半端なものにしてはいけないという覚悟と責任が強かったです。

僕は生まれてこの方東京育ちです。
2011年のあの日、高校から1時間以上かけて家に帰り、家具が散乱する自宅のテレビで見た津波と原発の中継を、僕はどうしてもどこか現実感のない映像として見ていました。

間違いなく「非日常」だったあの日の東京から10年以上の月日が経ちました。
僕自身は「日常」をいつしか取り戻していましたが、大学に進学して今に至るまで、あの日の傷を今でも負っている方にお会いすることがたまにあります。

他に形容出来る言葉が見つからないので乱暴な言い方になってしまいますが、震災で受けた方々の傷を、僕は真の意味で自分事として捉えられていないのだと思います。

そんな中、与えられた土浦という役。
わかった気になってはいけない。
最初に思ったことはそれでした。

配役発表されて、終わりまでの構成を聞いた日の稽古後、投稿したポスト。

土浦という役の特性上、彼は震災で肉親を失った被害者でもありますが、陰謀論を流布しコミュニティに混乱と不和を招く加害者の側面もありました。

そのどちらかに偏った見え方をするのは作品として非常に勿体ないなと思い、彼の在り方について作・演出の藤田恭輔くんとあれこれ話し合ったのをよく覚えています。

特に、物語のクライマックスで美知瑠と土浦が二人で会話するシーンのセリフを、僕と美知瑠役のつるちゃん(村上弦さん)と藤田くんの三人で「こっちの方が観ている人にとっていいんじゃないか」と意見交換出来たのは凄く有意義でした。

総じて、とても難しくもやり甲斐のある作品でした。
他にも土浦のTwitter鍵アカウントを作ってみたり、陰謀論についてYouTubeで調べてたらしばらくオススメ動画にそういう感じの動画ばかり表示されたり、まだまだ語り尽くせないことが沢山。

終演後、今度はかるがも団地にも出てみたいなぁなんて思いながら解散したのを覚えています。
まさか年内中にその機会が巡ってくるとは、その時は露知らず。

『WWW.』より。
土浦
彼のアカウントは、パスワードを忘れてしまったのでもうログインできません。悲しい。

②feblabo × シアター・ミラクルプロデュース『ホテル・ミラクル The Final』REST ver.「獣、あるいは、近付くのが早過ぎる」

2023年6月8日~6月20日
@シアター・ミラクル

『WWW.』が終演して2ヶ月程。
上半期、俳優としての予定がすっからかんだったところに知人から一件の連絡がありました。

「ホテル・ミラクル、男性キャストが足りてないみたいで、後関ってスケジュール空いてない?」

新宿シアター・ミラクル。
西武新宿駅前、歌舞伎町の入口にあった劇場。
今年の7月に閉館したこの劇場の、最期の演目に出演させていただきました。

「ホテル・ミラクル」。
シアター・ミラクルでシリーズ化していた、劇場企画の短編集。
新宿歌舞伎町の架空のラブホテル、ホテル・ミラクルの一部屋というシチュエーションの中で、様々な脚本家さんの書き下ろし短編を、劇場の管理人でもある池田智哉さんが演出するという公演です。

「ホテル・ミラクル」シリーズはそれまで7回行われていて、今回はその集大成。
今までのシリーズから1作ずつと、新作3本の計10本。それを2チームに分けて上演するという形式でした。

先んじて主宰の池田さんにお会いしてご挨拶をさせていただいた後、どの作品に出演するかを決めるための読み合わせ会に二度ほど参加しました。

1日目、過去自分が出演したことのある河村慎也の作品を、同じく河村作品で共演した今井未定さんと読んでみたりしました。
それはそれで面白かったけど、彼の作品をやるなら折角なら南京豆NAMENAMEでやってみたいなという贅沢でむず痒い気持ちもあったり。

2日日、池田さんから「後関くん、これも読んでみてもらっていいですか?」とお願いされたのが『獣、あるいは、近付くのが早過ぎる』。
読み合わせの相手役が、最終的に本番でもご一緒したとみちゃん(冨岡英香さん)でした。

元々、以前彼女が出演していたかるがも団地の芝居は観たことがあって、僕が出演していた三匹と三羽でもお手伝いに来てくれていたので、お互い挨拶したことはある位の関係でしたが、一緒に芝居をするのは初めて。

あのときの感覚は今でもよく覚えています。

読み合わせが始まってすぐ、
「あ、この人とこの作品やりたい」
と思っている自分がいました。

個人的に、芝居しているとき会話の波長が一致することは極めて稀だと思っていて、それを演出家含め互いにどう擦り合わせていくかも演劇の面白さだと思っているのですが、初読で本来擦り合わせた結果得られるものを殆ど貰えた感じがしました。

楽器全然出来ないからこの例えが正しいかわかりませんが、ジャズとかのジャムセッションがめちゃくちゃハマった時の感覚に近いのかもしれない。
このセリフ、僕ならこう行くんだけど、それを受けてあなたはどう来る?→そうだよね!そう来ますよね!
みたいな。

あまりにも感覚的すぎる文章。
でも本当に今年演劇やってて個人的に一番嬉しかった瞬間といっても過言では無いのでどうにか伝わってほしい。

そんなこんなで、演じることになった『獣、あるいは、近付くのが早過ぎる』。

作品自体もとても好きでした。

ただ歩くだけで全てを破壊していく謎の大怪獣が東京に上陸し、新宿方面に向かう。
そんな中、行き場も無く歌舞伎町のラブホテルに入った、空回りし続ける男と、男をからかいつつも行為は拒否する女の話。

僕が特撮好きなのと、日常と地続きの非日常みたいなシチュエーションが好きなのが相まって性癖ぶっ刺さり作品でした。
読み合わせでは他にもいくつか読ませていただきましたが、自分がやるならこれがやりたいなと第一印象からビビッと来た作品。

読み合わせの全日程が終わったあと、池田さんに「獣と〇〇だったらどっちやりたい?」と聞かれ「獣、やりたいです」と即答したのを覚えています。

稽古初日。
基本別作品と合同稽古だったので、他の作品が稽古している間は別室で待機していました。
口下手なので、何喋ったらいいかわからないなぁなんてことを思いながら、とりとめのない話をいくつかしてみることに。

その中で今振り返るとやって良かったなと思うのは、お互いの“地雷”を明確にしておこうという話。
二人芝居で相手役しかいないし、かつ設定からセンシティブな作品だったので、お互い嫌な気持ちにならない為にという考えから発案しました。

そのとき伝えた「芝居でやりづらいなと思ったときに、隠されてやりづらいな〜って感じになられるのが苦手」という発言が、後に自分を助けました。

劇場入りして稽古している最中、どうも噛み合わないなと思うタイミングが増えた様に感じていました。
休憩中にとみちゃんにそれとなく聞いてみたところ「後関さん、芝居大きくなってません?」と言われ、「た、確かに……!」と自己反省。
付けられた演出を遵守しようとするがあまり、芝居が大味になっていました。
まだまだ未熟、毎日が修行ですね。
しっかりと伝えてくれたことで軌道修正が出来ました。

公演中、他にもいろんなことがありましたが、なんとか最後まで終えることが出来ました。

僕にとって最初で最後のシアター・ミラクル。
知人友人が沢山出演していたけど、自分で立つ機会はなかったので、最後の最後に縁が繋がって良かったです。
本当にありがとうございました。

『ホテル・ミラクル The Final』「獣、あるいは、近付くのが早過ぎる」より。
ケンジ
劇中使ったデンモクは、去年自分の公演で使ったジャンク品を再利用させてもらいました。また使う機会があって良かった。

③かるがも団地 第8回本公演 マグカルシアター参加作品『静流、白むまで行け』

2023年11月9日~11月11日
@スタジオHIKARI

今年最後の作品は、かるがも団地でした。
『WWW.』が終わってひと月も経たない頃、藤田くんから一件のLINEが入りました。
かるがも団地の冬の新作公演に出てもらえないかという内容。

「えええ〜〜〜!!いいの〜〜〜!?!?やった〜〜〜!!!!!」

と内心小躍りでした。
当時下半期のスケジュールが不明瞭だったので一度保留させていただき、確実に参加出来ることがわかり次第、快諾しました。

『WWW.』では役の都合上、ほぼ兼役が出来なかったので、今回こそは何役もやるぞ〜と意気込んでいたところに再びLINEが。

「11月公演の件につきまして、やっとこれから台本と向き合い始める段階なのですが、土本燈子さんと一緒にお話の真ん中を託させていただけたらな…と思っている次第です。」

……おっと???

めちゃくちゃ有難いお話なんですが「いいのか??また俺で??」という驚きが勝りました。自己肯定感低め系人間の悪いところ。

ちゃっかり両開きフライヤーの片面を飾らせてもらっちゃったりしました。

『静流、白むまで行け』フライヤーの片面。
撮影・藤田くん。

このフライヤー、ご存知の方も多いかもしれませんが撮影は真夏のお昼に行われました。

最初はそれぞれ紹介用のピンショットを撮る形式。クーラーの効いた部屋で待機して、各々呼ばれたら冬の装いに着替えて外でサッと写真を撮りました。

ずっと酷暑の中撮影していたので、藤田くんが寡黙なラーメン屋店主みたいな表情だったのが忘れられません。

全員の撮影後、僕だけかるがも団地のメンバーに拉致されて連れられて、小田急線のとある駅のホームで表面用の撮影を行いました。

役者の写真をフライヤー用にガッツリ撮る舞台が久々だったので、暑かったけど素直に楽しかったです。

それからしばらくして、まだ夏の暑さがほんのり残る中稽古がスタート。

キャストが総勢12人もいるので、初っ端から団体芸で構成されたシーンをガンガン作っていきました。(ちなみに↑の演出は後に「やっぱやめよう!」ってなって違う感じになりました)

大勢でワイワイするシーンと、静かにじっくり芝居するシーンの温度差が本当に凄いんですが、それがキチンと同居するのがとても不思議だなって思います。

役の話もちょこっとだけ。

僕が演じたのは香椎洋貴くんという、元・アニメ脚本家で現・清掃会社のお兄さん。
スランプで本が書けなくなり、逃げるように脚本家を辞めた彼が、同じく自分の失敗が原因で幼稚園の先生を辞めた主人公・静流と出会い、お互いに影響を受け合うという話でした。

僕自身、過去に演劇を辞めようと思って明確に逃げた時期があるので、どことなく彼らにはシンパシーを感じていました。

どうしてもそれに引っ張られてか、自分の元々の癖なのか、作品の温度感に対して僕の芝居が湿っぽくなりすぎるきらいがありました。

稽古期間中、藤田くんに「ちょっと(後関の芝居)湿度高すぎるよね?」と相談したところ「うーん、そうですね。ちょっと脱水したいですね」と言われ、そこからはひたすらジメジメにならない芝居を模索し続ける日々でした。

結果、ちょうどいい湿度に辿り着けたか、正直なところ公演が終わってしばらく経った今もわかってません。
ただ、率直に自分がもっと出来たなーと思うことは沢山あります。
こういう言い方をするとネガティブに見えちゃうかもだけど、決してそうでは無く前向きな意味で。
本当に面白い作品になったと思うからこそ、もっともっと面白くしてみたかった。

多分それだけ、あの作品にいた人々に愛着が湧いているんだと思います。
香椎にも、静流にも、浦野家にも、会社の人達にも、凪ちゃんにも、悠浬にも、津村さんにも、スーパーの店員にも、濱崎さんにも。

もっと極限まで向き合っていたかったなという想いが溢れて、公演終わった次の日に一人で小田原に行っちゃったりもしました。

AM6:00の御幸の浜。
波めっちゃ荒かったし、結構撮影してる人が多かった。

なんというか、普通にいい町でした。小田原。
初めて行ったんですけどまた行きたいな。

兎にも角にも、ここ数年注目していた団体だったので、胸を張ってかるがもフレンズと名乗れることに誇りを持ってます。
今から公式ホームページの紹介文になんて書かれるか楽しみでたまらないぜ!

今後とも注目していきたいし、また絶対出たい団体だなって思ってます。
その想いは強くここに記しておきたい。

『静流、白むまで行け』より。
香椎洋貴
衣装がとても好きなデザインだったので、終演後買い取らせていただきました。とても温かい。

最後に

以上、今年の出演舞台振り返りでした。
三本と例年に比べると控えめでしたが、その分一本一本に心血を注ぐ時間が取れた気がします。

今年から色々あって少しライフスタイルが変わったので、無理ない範囲でやれるのはいい事かなって思ったり。

と言いつつ、来年今のところ何も決まってないので個人的にヤバいです。
オーディション情報もオファーも切望してます。マジで。

来年は20代最後の年なので、俳優に限らず挑戦の年にしたいですね。既に決まってることや、考えてることもあったりなかったり。

というわけで。
今年も残り僅かですが、皆様良いお年を。
ではでは。

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