肩甲上腕関節の評価について
この記事は、非常勤講師として働く中で、『ここ絶対に押さえといて!』と講義中に説明した内容を文字に起こし説明しているものになります。
今回は、肩関節前方脱臼*1の授業で話をした、肩甲上腕関節の評価についてまとめました。
この記事で得ることができる情報は以下の項目になります。
□肩甲上腕関節の運動と関節包の関連について理解できる。
□肩甲上腕関節の運動と回旋腱板の関連について理解できる。
□肩甲上腕関節の評価におけるポイントが理解できる。
□肩甲上腕関節と近隣の関節を含めた評価におけるポイントが理解できる。
□肩関節疾患における評価のルーティンを手にすることができる。
肩甲上腕関節の運動と関節包の関連について
肩甲上腕関節を包む関節包は、関節運動の状態に影響を受け、その性状を変化させます。また、関節包自体が伸張される肢位にて働きが最大となります。
臼蓋に対する上腕骨の骨運動について*2
矢状面での動き
屈曲:軸回旋+背側移動(0°~90°)、尾骨滑り+腹側滑り(90°~180°)
伸展:頭側滑り+背側滑り(-180~-90)、軸回転+腹側移動(-90~0)、軸回転
前額面での動き
外転:尾側滑り+腹側滑り(0°~90°)、尾側滑り+背側滑り(90°~120°)尾側滑り+腹足滑り(120°~180°)
内転:頭側滑り+腹側滑り(-180°~-120°)、頭側滑り+腹側滑り(-120°~-90°)頭側滑り+背足滑り( -90°~0°)
水平面での動き
外旋:腹側滑り(0°~90°)頭側滑り(90°)背側滑り(90°~180°)
内旋:背側滑り(0°〜90°) 軸回転+背側滑り(90°~120°)軸回転(120°~180°)
このように関節運動に伴う関節包の伸張位置(部位)を把握することが評価の中で非常に重要と言えます。
では、関節運動に伴う関節包の伸張部位に4区画に区分します。
①関節包の上方
②関節包の下方
③関節包の前方
④関節包の後方
以上の4区画に区分し、さらに
①前上方
②前下方
③後上方
④後下方
といった形でより限定的に区分することもできます。
肩甲上腕関節の運動と回旋腱板の関連について
ここでは、肩甲上腕関節の運動を引き起こす回旋腱板の働きと、肢位における役割の違いについてまとめていきます。
ATテキストでは、以下の評価方法が紹介されています。
刺上筋:Scapula Plane*での軽度外転肢位
肩甲下筋:結帯動作肢位
刺下筋:下垂位、軽度外旋肢位
*Scapula Plane:肩甲骨面と上腕骨の長軸が一直線に位置する位置を指す。この肢位において、関節包の前後の緊張は均等となる。
上記の評価項目に合わせ、下垂位以外の肢位でそれぞれの筋が持つ機能について理解をしておくことが重要と言えます。
以下に各回旋腱板の肢位による働きの違いについてまとめます。*3
肩甲上腕関節の評価におけるポイント
上記の評価方に合わせ、以下の機能評価(チェック)を併用することが、肩甲上腕関節(および肩甲胸郭関節)の状態を把握する上で重要となります。
この評価*4を実施することで、関節包の伸張と回旋腱板の機能を評価することができます。
この評価の捉え方として、肩甲上腕関節を覆う関節包の緊張が均一となるScapula Plnaeでの外転45°肢位を基準とし、水平面で肢位を代えた際に力の発揮や運動時痛に変化があるかを評価します。
水平内転域では腹側の関節包が緩むため内旋筋が。水平外転域では背側の関節包が緩むため外旋筋が関節の安定性に大きく関与するとされています。
肩甲上腕関節と近隣の関節を含めた評価におけるポイント
肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節は、密接に関連していることから、ATテキスト記載の内容で評価を完結した場合、その本質が把握できていない可能性があります。
その場合、同じ抵抗運動を肢位を変更して実施することでその違いを把握し、詳細を掴むことが望ましいと考えます。
考慮する点は、評価実施時に肩甲骨の自由度です。
言い換えると、肩甲骨が安定しているか否かです。
肩甲骨を把持したり、背臥位などでの実施は、肩甲骨が他の何かに接しているため、肩甲骨自体の安定性が担保される姿勢となります。
肩の運動は両者の関節(厳密には他の関節も関与している)による共同運動で構成されている為、肩甲上腕関節の機能に注目した肢位だと考えることができます。
評価のルーティン
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アスレティックリハビリテーションを考えるver1.1
非常勤講師として、学生にアスレティックリハビリテーションを教えている経験を元に、教科書+アルファの内容で記事を書いています。
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