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短々篇小説作家です。サクッと読めてちょっと不思議な気持ちになれるショートショートを書い…

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短々篇小説作家です。サクッと読めてちょっと不思議な気持ちになれるショートショートを書いています。登場人物のイメージイラストなども載せています。小説もイラストももっとこうしたらいいよっていう改善点指摘してもらえると泣いて喜びます。

最近の記事

ショートショート『ダンスインザダーク』

 カウンターの隣でけらけらと楽しそうに笑う紗理は、昔よりずっと綺麗だ。だけれども、彼女の目の奥に高校生の頃にはなかった暗いものがあって、どうしようもなく破滅的な印象を覚えてしまう。時刻は午前二時を回っていた。外に出れば冬の寒さが身を刺しそうだ。 ***  この街には出張で何度か来たことがあるが、ナイトクラブに入ったのは初めてだった。入社直後から付き合っていた恋人とつい最近別れるまで、そういった男女の思惑が入り乱れる場所には出入りしないことにしていたから。  夜の接待の後、

    • ショートショート『魂は石みたいな形をしている』

      金髪の少女だった。 ***  真由子は力いっぱい目をつぶり、直前の記憶を思い出そうとする。いや、記憶は鮮明だ。思い出そうとする、というより、確認しようとする、と言った方が正しいかもしれない。  その日の夕方、真由子はオフィスを出て、恋人との待ち合わせ場所に向かうところだった。タクシーを拾おうとしたが路上駐車している宅配業者のトラックが歩道への視界を遮っていたのでしかたなく車道に出ると、真由子すぐ脇を金髪の少女が車道の真ん中に歩いていく。向こう側が透けて見えそうな儚げな少女だっ

    ショートショート『ダンスインザダーク』