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SIX WORDS の楽しみ (3)

 不定期連載「SIX WORDS の楽しみ」第3回です。10年前に書いたものに少し加筆して再構成しています。第1回はこちら、第2回はこちら
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  Year of Pig marries the Snake. 

 訳は「亥年と巳年が結婚」。十二支の話なので、もちろんこの pig は日本で言う亥(いのしし)です【5月19日追記:中国、韓国では「猪」「亥」は豚のことだとツイッターで教えてくださった人がいました。ありがとうございます】。
 十二支を英語で言うと、Chinese animal zodiac。順に rat、ox、tiger、rabbit、dragon、snake、horse、sheep、monkey、rooster、dog、pig ですが、rooster のかわりに cockが、pig のかわりに boar が使われることもあります。
 むろん迷信ではありますが、亥年生まれと巳年生まれは相性が悪いと考えている人は、洋の東西を問わず、少なからずいるようです。理由は猪が蛇を食べるから、など諸説あって、実のところはよくわかりません。
 この作品は SMITH Magazine のサイトで Six-Word Memoir of the Day(その日投稿された最優秀作品)に選ばれたことがあり、お祝いのコメントがいくつかついていましたが、それを受けて作者が "Thanks all - we had chinese for supper to celebrate." と返事をしていました。どんな料理を食べたのでしょうね。

  My thoughts are with you sixwordsjp.
  May my word friends be safe.


 これは、2011年の東日本大震災が起こったあとで、日本のツイッターアカウント(@sixwordsjp)や six words 愛好者へ向けて、あるアメリカ人のかたが送ってくださったメッセージです。「あなたがたが心配よ、sixwordsjp。わたしの six words 仲間が無事でありますように」――ありがたいことですね。

  Time to start over again, again.

 これは2010年に刊行した『SIX-WORDS たった6語の物語』に載っていた作品です。ツイッターでは1日1作品を自動的に紹介しているのですが、大地震のあと、最初に飛び出したのがこれでした。本では「そろそろやりなおそう。もういっぺん」と訳しましたが、震災直後のその日、訳しなおしました――「さあ、復活だ、もう一度」。

  Worry my kids will google me.

 意味は簡単ですね。ここでは検索エンジンの Google が動詞として使われています。日本語でも「ググる」という動詞がすっかり定着しました。
 一般に、翻訳者は最新の流行語を訳文に入れることに対しては慎重です。その訳語がある程度長く世に出まわるとしたら、「寿命」や「賞味期限」がどうしても気になりますからね。ただ、今回の場合、内容を考えると「ググる」ということばの軽い響きがぴったりだと思います。というわけで、わたしの訳も「子供たちがあたしをググったらどうしよう」。

  Dutifully dressed my son in green.

 これが投稿されたのは3月17日でした。3月17日は St Patrick's Day(聖パトリックの祝日)で、アイルランドにキリスト教を広めた聖パトリックの命日として知られています。この日は世界各地でパレードなどの大規模な行事がおこなわれ、アイルランド系の人たちはShamrock(三つ葉)を身につけたり、緑色の服を着たり、緑色のラガービールを飲んだり、さまざまな形で聖なる日を祝います。日本でもかなり前から、3月中旬あたりの週末を利用して各地でにぎやかなパレードが開催されてきました。
 もちろん、どの民族にも信仰の篤い人もいれば形ばかりの人もいるのですが、この作者は dutifully などと言っていますから、どうやら後者らしいですね。そんなわけで、わたしの訳は「律儀にも息子に緑の服を着せてみた」。
 しかし、そう言いながらも、この作者は投稿後のコメントとして "My son looked really cute in his green Superheroes shirt." と書いています。

  Redneck? Country? Is there a difference?

 redneckは、戸外労働でよく首が赤く日焼けすることから、「南部の無学で貧しい白人農園労働者」の蔑称である、などと辞書にあります。たしかに侮蔑的な響きはあるものの、自嘲気味に使うぶんには逆に笑いをとれる程度のニュアンスを持ったことばではないでしょうか。もっとも、外国人であるわれわれは不用意に口にしないのが賢明でしょう。
 これは、日本語では「かっぺ」あたりが近い気がします。訳すにあたっては、redneck と country のあいだに思いっきり格差をつけたいところで、それでこそつぎの "Is there a difference?" が生きてきます。そんなわけで、わたしの訳は「かっぺ? 地方人? どこがちがうん?」。
 実は、これとまったく別の読み方があることをツイッターで知らせてくれた人がいました。1970年代、カントリーミュージックに redneck rock というジャンルがあったそうです(シンガーではウィリー・ネルソンなど)。だとすると、曲の区別がつかないという解釈もありえますね。どちらが正しいとは言いきれません。
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 書籍『SIX-WORDS たった6語の物語』は、残念ながら現在では入手困難の状態です。ツイッターでは @sixwordsjp のアカウントで1日ひとつを紹介しているので、よかったらご覧ください。


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