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小説&ショートショート

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小説は主に短編です。フリー台本として、ご自由にお読みください。 (全部ではありませんが、「聴くっしょ!」にも投稿しています)
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#私の作品紹介

Into the Blue|掌編小説

 ――誰だ?  いつも学校帰りに寄り道する場所に、知らない人がいた。ぼーっと立って、海を…

トガシテツヤ
2か月前
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金色の稲穂|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 懐かしい色だった。  ――そうか。もうすぐ稲刈りか。  俺の地元では稲作農家が多く、そ…

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いちょうさん|毎週ショートショートnote

 ――ツイてない……。  下校中、自転車の後ろのタイヤがパンクした。自転車屋まで、ここか…

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夏雲|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 夏の雲がふよふよと漂っている。群れからはぐれて、地上まで降りて来てしまったんだろう。ふ…

トガシテツヤ
1か月前
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転がる石ころたち|短編小説

「あー、この曲、CMで聞いたことあるな。言うなよ? 当てるから」  カーオーディオから流れ…

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イチョウの木|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 12月の頭に帰省しようと思ったのは、年末年始の民族大移動に巻き込まれるのが嫌だったから。…

トガシテツヤ
9か月前
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恋文を読む人|掌編小説(#春ピリカグランプリ2023)

「あの人、ラブレター読んでる」  オープンテラスのカフェで、向かいに座っている妻が突然言い出した。僕の肩越しに誰かを見ているようだ。 「あー振り向いちゃダメ! 気付かれるから!」  90度動かした首を再び正面――妻の方へと向ける。 「なんでラブレターって分かるの?」 「人差し指でこう……文字をなぞるように読んでるの。横にね。私も昔、ああいう風に読んでたから」 「ラブレターを?」 「そう」  一瞬、「いつ、誰からもらったんだ?」と嫉妬の念に駆られたが、とりあえず耐える

空色の鉛筆|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 新しい色鉛筆を買った。とは言っても、それは「空色」と書かれた1本の鉛筆で、黒色の芯が付…

トガシテツヤ
8か月前
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梅の実|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 梅の花を見ると、亡くなった祖母を思い出す。  名前が「梅」だったんだが、それだけではな…

トガシテツヤ
7か月前
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ジッポライター|掌編小説

 ――タバコとコーヒーってさ、似てるよね。  知り合った頃の、彼女の第一声だった。その時…

トガシテツヤ
10か月前
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迷い猫|短編小説

 帰宅すると、妻が「ねぇねぇ!」と手招きした。 「ガレージに迷い込んでたの」  妻の膝の…

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黒猫ノワール|短編小説

 リビングで本を読んでいると、優子の部屋から鼻歌が聞こえてきた。私はそっと聞き耳を立てる…

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海砂糖|掌編小説(#シロクマ文芸部)

「海砂糖を1つください」  僕がそう言うと、店主は眉をひそめた。 「あなた、海砂糖を一体…

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雨を泳ぐクジラ|掌編小説

 もう1週間、雨が降り続いている。僕は自分の部屋からずっと空を見上げていた。  こんな日は、つい探してしまうんだ。  ――クジラを。  あれは小学2年生の時。ある土砂降りの日、学校から帰って2階の自分の部屋で宿題をしていると、雨がゴーゴーと降る音に混じって、何か聞こえた気がした。  ――何だろう。  不思議に思い、窓を開けて日が沈んだ夕闇の空を見ると、突然雨が止んだ。いや、正確に言うと、雨が僕の顔の周りを避けて降っていた。「あれ?」と思った瞬間、空からゆっくりと巨大