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無駄だらけの人生、せめて今夜だけでも穏やかな夜を

社会人4年目、わたしは限界だった。

新卒で入った職場はセクハラもパワハラもモラハラも溢れた職場で、それでもどうにか抵抗したり自分をだましたりしてなんとか毎日をやりすごしていた。でも4年目の夏、今となっては事細かく覚えていないけれど、わたしは限界を迎える。

いわくつきの異動で新しくやってきた部長から女子だからというだけで何か仕事を押し付けられ、めちゃくちゃにキレたのだ。

気づくとわたしは泣いていて、同じ係の女性の先輩に抱えられて更衣室に連れて行かれていた。先輩はわたしをひとり置いて、「こっちはうまくやっておくから、落ち着いたら帰っておいで」と言ってくれた、はず。

ひとしきり泣いたあとで、わたしはもう笑うしかなかった。あんな大人のためになんでこっちがこんなに嫌な気持ちにならなきゃいけないんだとか、だれもわたしを救ってはくれないから自分で抜け出すしかないとか、そういうことを考えた末で、オフィスに戻る前にわたしは一度躍ることにした。

ひとりきりの更衣室でSMAPの『Joy!!』を無音で踊っていた。

どうにかなるさ人生は
明るい歌でも歌っていくのさJoy!! Joy!!

頭をがしがしする振り付けで躍るSMAPはすごく楽しそうで、このころのスマスマでは毎週いろんな人とコラボして歌っていた。見ていてすごく元気が出たし、今でもすごく好きな歌。

踊った後はなんだかすっきりして、もう嫌なことがどうでもよくなった。毎日続く止まらないサイクルは自分で切り開くしかないって本当に思えた瞬間だった。

とは言いつつ最近もひどく落ち込んでいて、あのひとりで踊った更衣室のことを思い出していた。ハラスメントはないけれど、今の閉塞感はあのころに似てるなって。

だから津野さんの訃報を見て、すごくすごくつらくなってしまった。


わたしにとって『Joy!!』は救いの歌なのに。その作り手さんが、旅立ってしまった。かなしい。人生はどうにかなるって歌、作ってくれたじゃんか。

歌と作り手は必ずしも同一の気持ちであるとは思わないけれど、かなしい。


2020年、かなしいことが多い。それでもわたしはせめて生きなきゃだと思う。明るい歌を歌いながら、どうにか生きるしかできないから。

どうか、安らかな夜を。




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