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【インタビュー】「相手を知るために、常に根拠のある関わり方を」 サービス管理責任者 石田理士

2023年12月、重度の肢体障がい者も対象とした就労継続支援B型事業所「テクノベース」が開設しました。
設立にあたって中心的なメンバーとして活動し、今後は運営の核を担うサービス管理責任者である石田に、テクノベースの特徴や大切にしていることを聞きました。

石田 理士
施設管理者兼サービス管理責任者
1980年7月25日生まれ。公認心理師。
学生時代は陸上競技(長距離・駅伝等)にて全国大会出場多数。関東学院大学文学部社会学科卒業。
2003年から知的障がい者通所施設にて障がい者支援に従事し障がい者の社会参加について関心を持つ。施設運営を学ぶため、2008年から株式会社ドトールコーヒーで店長職に従事。2014年から就労移行支援事業所にてサービス管理責任者として勤務。
2021年から障がい者グループホーム管理者兼サービス管理責任者として施設の立ち上げ等を経験後、2023年にテクノツール株式会社、同年にテクノベース株式会社(就労継続支援B型事業所管理者兼サービス管理責任者)へ入社し、テクノベース設立に従事。

01:テクノベースに参加することになった経緯を教えてください。

私は施設管理者とサービス管理責任者として、テクノベースで働いていています。施設管理者というのは、いわゆる運営管理です。そしてサービス管理責任者というのは、個人の特性に合わせた良質な支援ができるように、スタッフやほかの専門機関と連携を取りながら個別支援計画を作成する仕事です。この仕事において重要なのが、押し付けではない「意思決定支援」を目指すこと。とはいえ、意思表示が難しい人、何ができるのか自分でもわからない人ももちろんいて、簡単なことではありません。

日々そんな難しさと向き合う中、共通の知人を通じて島田社長と会う機会がありました。テクノベースのお話を聞いた時には「きちんと実現したら、寝たきりという概念がなくなるんじゃないか」と驚きました。アシスティブテクノロジーを活用することでコンピュータアクセスが可能になれば、その人の意思決定がクリック一つで叶うようになるなと。イエスノーを示せることはもちろん、意思を持つためには様々な情報にアクセスできることが必要です。それが自分でできるようになれば、どんな障がいの人に対しても意思決定支援の可能性が大きく広がると感じました。その可能性にチャレンジしてみたいと強く思って、テクノベースへの入社を決めました。

02:テクノベースを運営するうえで、どんなことを大切にしていきたいですか?

やはり「意思決定支援」をしていきたいので、それぞれの利用者さんが、どうしてこういう場所を使いたいと思ったのか?を丁寧に見つけていきたいと思っています。ご本人も最初からわかっているとは限らないので、「まだわかりません」という答えでもいいんです。色々な話を積み重ねながら、どんなことを聞けばその人の気持ちが見えてくるのか、反対に聞かれたくないことは何か、常に考えながら接していきたい。なぜその考え方なのか、背景を知って理解するための話をしたり、少しずつ理解できてきたら、必要な情報をこちらからも伝えていったり。何も考えずに関わるのではなくて、相手に対して「根拠のある関わり方をする」というのを意識しています。

03:テクノベースの開設という新しいチャレンジに対して、どのように感じていますか?

生きていれば、いつ何時、事故や病気に見舞われるかわかりませんし、加齢で変化することは避けられません。そんな時に、誰にも人生を諦めてほしくない。私たちが目指すのは、今障がいのある人のためということではなく、全ての人のために、「どんな状況でも社会参加できる」と自然に考えられる社会です。

このビジョンの実現は、とても大きな岩を動かすような、簡単ではないことです。でも、本当に私たちが日々実行できることというのは、「手前の小石をちょっと頑張って押す」ようなこと。それを続けることで、小さな石がたくさん動き出して、次に中くらいの石がまた動いて、結果的に大きな岩が転がり始める、というイメージを持っています。

そこに辿り着くには、何年もかかるかもしれません。ぱっと見には、何も動いていないように見える時期もあるかもしれません。一人では途方もなくて続けられないようなチャレンジですが、テクノベースには素晴らしい仲間たちが集まってきてくれました。目の前にいる人たちと一緒に、一つずつモデルケースを作っていって、社会に広がっていくような取り組みを続けていけたらと思っています。

04:どのような方にテクノベースを活用してもらいたいと思いますか?

どんなかたちや程度かが決まっていなくても、働くということにチャレンジしたい、社会と関わりたいと思っている方に活用して頂きたいです。就労をした経験があってもなくても、大丈夫です。年齢にも制限はありません。経験や年齢に関係なく、「社会に参加できている」という感覚は、自分は必要とされているという自己重要感に繋がる大切な感覚です。その感覚を諦めないために活用して頂きたいです。働くことに初めて挑戦する若い人はもちろん、事情があって退職したけれど年齢や体力的に再就職が難しい、という人にとっても可能性のある場所だと思っています。

テクノベースはゴールではなく、スタートだと考えています。自分にこんな可能性があったんだと自信を持ってもらえるような、挑戦してみてよかったと思ってもらえるような場所にしていけたら。そして、ここからご自身の可能性をもっと広げていくために、一緒に「働くこと」について考えたり行動していけたら嬉しいです。

05:テクノベースは、社会にどんな影響を与えられると思いますか?

身体やこころの状態によって、人生ややりたいことを諦めたくなる瞬間があるかもしれません。そこに情報という光を届けられるような存在になれるんじゃないかと思っています。実際にやるやらないはもちろんご本人の意思によってどちらでもいいと私は思っていて、でもその「諦めなくていい」という「情報」が、生きる希望になったらいいなと思うんです。

情報が少ないことで、これしかないからと、本当はやりたいわけではないことをしている方もいると思います。そういう違和感を諦めないで、自分の個性や本当にやりたいことに近づける、見つけられる場所にしていきたい。そして、その情報を一人でも多くの方に届けることを目指していきます。