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【インタビュー】「テクノベースというチームで、新しいはたらく形の選択肢を」 スタッフ 青江 美智子

2023年12月、重度の肢体障がい者も対象とした就労継続支援B型事業所「テクノベース」が開設しました。
その事業所スタッフの一人である青江に、テクノベースで大切にしていきたいことや、今後実現していきたいことなどを聞きました。

青江 美智子
1998年4月22日生まれ。九州大学法学部卒業。2021年、株式会社LITALICOに新卒で入社し、就労移行支援事業部LITALICOワークスに配属。福岡県北九州市の事業所にて、主に精神・発達障害のある方の就労支援に従事。
2023年11月より、株式会社LITALICOから出向でテクノベース株式会社に参画。

01:テクノベースに参加することになった経緯を教えてください。

2021年から株式会社LITALICOに在籍していて、現在はLITALICOからの出向でテクノベースに参画しています。私は大学が福祉関係ではなかったので、就職してから福祉について一から学ぶ環境だったのですが、就労移行支援のジョブコーチとして2年半ほど経った頃、だんだんと自分の働いている環境を相対的に見られるようになった感覚がありました。そうすると、「今自分が当たり前に提供している就労移行支援事業という枠組みや支援の場は、先人たちが切り開いてきたものなんだ」ということを感じるようになったんです。ありがたみを感じたと同時に、自分もそういった「事例がなかったところに挑戦して新しい選択肢をつくる」という「最初の一歩」に取り組んでみたいと思うようになりました。
ちょうどその頃、テクノベースへの出向のお話が社内であり、説明会に参加をしました。すると、今まであまり取り組まれてこなかった「重度の肢体障がいのある方」も受け入れる事業所の開設ということで、やってみたいと思っていた「事例がないところに挑戦していく」事業だと感じました。かつ「障がいのある人が働く」ことに対する社会の認識、社会環境(ベース)そのものを変えていく、という目指している部分にとても魅力を感じて、テクノベースへの出向を希望しました。

02:テクノベースを運営するうえで、どんなことを大切にしていきたいですか?

テクノベースはまだ開設して間もないので、スタッフそれぞれの役割や事業所の運営自体は、現在も模索しながら構築中ではあります。そんな中で今大切にしたいと思っているのは、利用者さんご本人が何がやりたいかというニーズを大事にしながら、ただ全て私たちが合わせていつか無理がくるような支援をするのではなく、「一緒に働くパートナー」として対等に接するという姿勢です。できること、できないこと、試してみるけれど確約はできないこと…運営上の状況もきちんとお話ししながら、どうやったら希望に近い状況を「一緒に作っていけるか」ということを対等に相談して決めていく、というスタンスを、他のスタッフも大切にしていると感じています。

例えばLITALICOで携わっていた就労移行支援の場合は、事業所外への一般就労を目指し、最終的には事業所を卒業することが目標です。それに対して、テクノベースのような就労継続支援B型事業所は利用者さんの入れ替わりは少なく、「全員でテクノベースという一つの会社を作っていく」という特徴があります。そういった特徴を生かして、どうやったらいい会社、いいチームになっていけるかということにチャレンジしていきたいと思っています。

03:テクノベースの開設という新しいチャレンジに対して、どのように感じていますか?

テクノベース自体は、定員もあり小さな事業所なので、物理的にたくさんの方に直接サービスを届けられるわけではありません。ですが、「色々なタイプの事業所がある」ということが大切なのかなと思っていて、その選択肢を一つ増やせることを嬉しく思っています。テクノベースを通して、今まで知られていなかったニーズやケースを発信できる機会も、少しずつ増えると思います。テクノベース一つで何かが大きく変わる、ということではないけれど、業界全体が目指している社会像に向けて果たせる役割はあると思っています。少しずつ変化を生んでいく取り組みの一つとして、小さな挑戦を積み重ねていきたいです。

04:どのような方にテクノベースを活用してもらいたいと思いますか?

業務内容に興味がある方はもちろん、自分の力を試してみたい気持ちと働くことへの不安がどちらもあって「自分の働き方を模索してみたい」という方にも使っていただけると嬉しいです。働いた経験がない場合、自分にとっての「働く」をつかみかねている方も多いかもしれません。そんな方にとってB型事業所は、雇用契約がない分、仕事で求められる形に自分を合わせるのではなく「自分に合う働き方」をトライアンドエラーで形作っていくことができるのが強みかなと思っています。その強みを生かせるように、仕事の種類も幅広く準備したいと奔走中です。私たちスタッフも利用者さんも手探りの部分も多いため、一緒に進んでくださっている企業の方のご協力も得ながら、「既存の働く像」ではなく「自分にとっての働くかたち」や「仕事とのちょうどいい距離感」を見つけていける場所にしていきたいです。

05:テクノベースは、社会にどんな影響を与えられると思いますか?

実際に一つ一つ「働く事例」を実現して、想像ではない「実際の姿」を発信することで、当事者の方々や世の中の「障がいのある方が働く」ということのイメージを変えることができるのではないかと思っています。
私自身、テクノベースで働き始めてから、アシスティブテクノロジーによって肢体障がいのある方々のパーソナリティや可能性が引き出される瞬間を目の当たりにしました。物理的な変化はもちろん、「自分にこんなことができるんだ」と気づいた時に、それまでご本人も気づいていなかった個性…次にやりたいことへの意欲や、負けず嫌いな性格などが出てくるといった精神的な変化も起きているように感じました。そういった変化や、意欲を持って取り組む姿を「見て」頂ける場を増やして、丁寧に発信していきたいです。そして、当事者の方の「自分にも何かできるかも」、企業の方の「何か任せてみたい」という気持ちを引き出せたらいいなと思っています。