2万5000円の権力

すでに決まっていた消費税の10%引き上げがいよいよ間近となった。

しかし、いくら安倍政権が強いとはいえ、政策一つでその風向きは変わりかねない。特に消費税引き上げの実施は政権運営にとっては強い逆風となりがちである。

ネット上では安倍信者たちが必死に「消費税増税は民主党政権の責任!安倍総理は消費税引き上げに反対して財務省と戦っている!!」という陰謀論を唱えまくっている。

しかし、そもそも今回の10%への消費税引き上げは、当時の民主党政権のみならず、当時野党であった自民党と公明党による「三党合意」によって決定されたものであり、当時に自民党議員であった政治家が批判できるものではない。

また、当時のニュースソースを見るに、当時、政権与党であった民主党では、主流派こそ消費税引き上げに賛成の票を投じたものの、当時の非主流派であった小沢一郎グループなどの議員が反対票を投じ、民主党分裂の引き金となった。

一方で、当時の野党である自民党と公明党は、ごく一部の棄権した議員こそいたものの、党の方針として賛成票を投じている。もちろん安倍晋三や麻生太郎なども消費税引き上げに賛成票を投じた。

政権与党であった民主党の議員が党を割ってでもと消費税増税に反対したのに比べると、自公の議員はまったく反対の意思を示さなかったのである。

安倍政権では2度の10%引き上げ延期が行われたが、それだけをもって「安倍政権は消費税増税に反対」というのは、あまりに政治家の投票行動に対する責任を軽視した主張であり、同時に事実無根の呆れた主張であると言える。

さて、そんな消費税増税という(自ら賛同して作り出した)逆風に対して、政権与党も無策ではない。

「軽減税率」!!
「マイナンバーカードを用いたポイント還元」!!

そして今回、公明党が出してきたのが「20,000円で25,000円分のプレミアム商品券」という実にくだらな……面白い政策だ。

しかも、対象が住民税非課税世帯に限られるとか、低所得者対策の給付金を受け取っている人は対象からはずすとか、どうのこうので所得制限がつくらしい。

まず誰が考えてもわかることは、住民税非課税世帯のような極度な貧困層は、25,000円の商品券を購入するために20,000円をポンと出せないということだ。

仮にもう少し要件緩和がされたとしても、低収入層にとっては、25,000円前後で買うものが決定していなければ、20,000円の出費はきつい。

また、発行する側にとっても、購入者が購入の要件を満たしているのかの確認など、非常に手間がかかる。

仮に発行されたとしても、25,000円分の商品券がメルカリで23,500円くらいで売られる結果にしかならないだろう。経済効果? 誰がそんなものを信じているのか。

ハッキリ言って、そんなつまらない手間を掛けず、素直に全国民に5000円をバラ撒いたほうがマシなのは明らかである。

だが、単純にはバラ撒けない理由がある。

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