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川口 喜楽湯に行ってきた

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日本の「お風呂屋」というのは「一般公衆浴場」と「その他の公衆浴場」の2つに分かれて、都道府県の条例で定められている。
一番わかり易い違いは、一般公衆浴場は法的に保健衛生上必要なものとして定められ、物価統制令によって入浴料金が統制されている。
逆にその他の公衆浴場は入浴料金を自由に設定することができる。

一般公衆浴場は出店規制などにより、ある程度の範囲においては排他的に営業をできるメリットはあるものの、もはや風呂無しの家も少なく、そのメリットはほとんど意味を失っていると言っていい。
一方でその他の公衆浴場、いわゆる「スーパー銭湯」は、一般公衆浴場の数倍の入浴料を設定し、それを元手に新しいサービスへの投資に使うことができる。
結果、その他の公衆浴場は競争は激しいものの、努力次第で多くのお客を集める事ができる。
またお客としても銭湯に行くということは、日常ではなく非日常になっており、非日常の経験を、安いがそれなりの施設の銭湯よりも、多少高くても豪華で立派なスーパー銭湯で過ごすようになっている。
現在のサウナブームを牽引しているのも、そうしたスーパー銭湯である。サウナーがサウナ目当てで普通公衆浴場を回るというのはあまり多くはない。

現在、僕が住んでいる家の近所でも、少しずつ一般公衆浴場は減っている。もちろん、経営努力をしている一般公衆浴場もあり、入浴料金は変えられないにしても、昔ながらの番台を配して、フロント方式にしたり、ジェットや炭酸泉を増やしたり、サウナを設置して別料金を取ったり、風呂上がりにビールやちょっとした食事を提供するなど、その他の公衆浴場ほど大きくはできないものの、来客数や客単価をアップさせる努力をしている銭湯も増えてきている。
そうした状況で、今後はサービスを増やして生き残る一般公衆浴場と、もはや滅びゆく定めとしか思えない一般公衆浴場は明確に別れつつある。

今回、訪れた喜楽湯は川口市にある一般公衆浴場である。
場所は京浜東北線川口駅と西川口駅の中間あたり。どちらからも徒歩12分くらい。住宅街のどまんなかにある。
地図上ではショッピングモールのアリオ川口にほど近いが、間には鉄道高架がかかり、行き来には遠回りをする必要があり、全く商圏にはならない。
つまり、全く不利としか言いようのない位置にある。

この喜楽湯はWebベースの新しい銭湯メディアである「東京銭湯」が運営している銭湯である。1950年代から続く銭湯を譲り受けて2016年から運営を開始している。
2017年にはWebメディアと喜楽湯での様々な活動が認められ、グッドデザイン賞を獲得
2018年1月には、NHKのにっぽん紀行で「モヒカン&もじゃもじゃ みんなの銭湯~埼玉・川口~」というタイトルで取り上げられるなど、メディアでの露出も多い銭湯であり、これからも注目を集めていく存在であろう。

と、前置きが長くなったが、入る側にしてみれば、一般公衆浴場だろうがその他の公衆浴場だろうが、メディアで取り上げられていようが取り上げられていなかろうが、その心地よさが全てである。

開放的な入り口を入ると、券売機がある。
写真を取り忘れてしまったが、券売機には通常の入浴券の他に、はじめての人用の入浴券が売られている。
値段は価格統制がされているので同額だが、はじめての人用の券には、丁寧な説明がついてくる。
NHKのにっぽん紀行では、客とのコミュニケーションを大切にしている旨が語られており、この券もはじめての客を認識して、リピートにつなげていこうという試みだろう。

フロントを抜けて男湯に入ると、昔ながらの銭湯の広い脱衣所が広がっている。普通の銭湯と違うのは、ロッカーの一部の扉が取り外され、漫画本が置かれている点である。もちろん自由に読むことができる。
お風呂も昔ながらの一番奥に大きな浴槽があり、その手前にカランが並ぶスタイル。シャンプー・リンスが設置されていて自由に使えるのが嬉しい。天井も高い。
湯船は深いジェット、浅いジェット、普通のお風呂、水風呂に分かれている。
そしてサウナ。6人入れば満員の狭いサウナだが、しっかりと熱く、十分満足。このサウナ、驚くことに入浴料だけの追加料金無しで入ることができる。地元の銭湯だと追加料金があることが当たり前なので、ありがたい。
水風呂は20度程度で誰でも入れる安心温度である。

フロントではドリンク類を販売している。もちろんコーヒー牛乳などもあるが、アルコール類も充実し、IPAビールなども販売されている。
ちなみに、トップの写真は「初めての方向けカード」の特典でもらったコロナビールだ。はじめての場合はたった2回の来訪でドリンクがもらえてしまう。とってもお得。

さて、この喜楽湯。僕が一番感心したのは、スーパー銭湯のような改築をしていないのに、しっかりとオシャレでいい感じのスペースになっていることである。
都内でもわりと湯船を増やしたりしている銭湯はあるし、またスーパー銭湯と見紛うような改築をした銭湯も少しずつ出てきている。
しかし、この喜楽湯は基本的な設備は、僕が子供の頃からよくあった「本当にごくごく平凡な銭湯」なのである。
それをリフォームやリノベーションをするのではなく、無理のない範囲でオシャレにした結果、若い人はもちろん、地元の昔から住んでいるようなお年寄りにも馴染みのある「みんなのための銭湯」になっている点が、とにかくすごいと感じた。

あと、気がついたのは、いわゆる昔ながらの銭湯より、明確に明るいことである。清掃が行き届いているのはもちろんだが、照明の設定がいいのか天井までしっかり明るく、喜楽湯全体に淀んでいるところがない。風呂に入って天井を見ていると、青空を仰ぎ見ているような気分になれる。
お風呂に入って、斜め上に見上げたときの景色というのは、意外と重要である。

銭湯というのは気持ちいいものだが、ここまで気持ちが軽くなる銭湯も珍しい。
駅から遠いなどの不便な点もあるが、川口や西川口が遠くない人であれば、一度訪ねてみることをおすすめする。

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