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バッファロー・ソルジャー

バッファロー・ソルジャー 或いは人類の歴史

丘の上に立って、広い草原を眺める。

狩りをするために、丘の上に立って、バッファローの大群がやってくるのを待っている。
ずっと、待っている。

耳のいい先輩は、もう死んでしまったのだけれど、連中は確実にいるのだから、必ず来ると言って、けれども、大群の来るのを見ないうちに逝ってしまった。

「風を聴くんだ」と先輩は言った。「聞こえるだろう。いるんだ。必ず来る」そう続けると、僕に待つように言って、死んでしまった。

僕は、先輩に習って、だからずっと立って、もうそれもままならなくなってきたけれども、先輩たち — 僕の先輩にも先輩がいるんだそうだ — に言われたまま、立ち続けて僕にもそれが分かるようになった。

そう、連中はいる。絶対に来る。すぐ。

女たちは、ずっとずっと奥にある山を越えたところで子供たちと花を摘んでいる。

男たちは何処へいってしまったろうか。先輩が死んでしまったので、僕は一人になって、いよいよ、もう立つこともままならない。

それでも、耳はよく働く。昔、ある女がバッファローの大群の来る夢について話してくれた。それはほんとうに沢山の立派なバッファローだったそうだ。

たぶん、男たちはどこか低い緩衝地帯にかくれて、バッファローを仕留めようと、長いことずっと息を潜めているのだ。

僕はきのう、夢で水を聴いた。いや、そんな前のことだったろうか。

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