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欧州サッカーの魅力に溢れた「事実上の決勝戦」~2022カタールW杯QF フランス2-1イングランド

pic. by ロイター

「事実上の決勝戦」となった準々決勝の最終戦は、前回覇者フランスが盤石の試合運びでイングランドを2-1で下し、ベスト4入りを決めた。

やっぱり強かったフランス

序盤からフランスが主導権を握り、イングランドがカウンターで隙をうかがう展開。
前半17分、試合が早々に動く。
フランスがペナルティエリア前でボールを動かし、グリーズマンが斜め後ろへパス。ボランチのチュアメニが、右足ワンステップでミドルシュートを豪快にゴール左隅に突き刺し先制。
反撃に転じたいイングランドだが、その後のケーンの決定機を、フランスGKロリス(トットナムではケーンのチームメート)が、ことごとく阻止。
前半22分、巧みなターンで右サイドを突破しGKと1対1になるも、ロリスがストップ。続く29分、ペナルティエリア外からの強烈なミドルを、これまたロリスが好セーブ。
こうなると、フランスのワンサイドゲームになってしまうのか? と思われた後半9分。
ペナルティエリア内でサカがチュアメニに倒され得たPKを、ケーンがゴール左上隅に叩き込み、1-1の同点に追いつく。

その後は、一進一退。
目が離せない、スリリングな攻防が続く。

後半10分。カウンターからフランスが、ラビオのシュート。
後半25分。セットプレーからイングランドが、マグワイアのヘディングシュート。
後半32分。フランスが、ムバッペとラビオが左サイトで起点を作り、ファーへセンタリング。デンベレが折り返し、ジルーが中央でボレーシュートを見舞う。
決定機はいずれも決まらず。

こういう展開だと、セットプレーが鍵になるのだろうかと思った、後半33分。
左コーナーキックを得たフランスは、一度はイングランドDFに弾かれたものの、左から再びグリーズマンが放り込んだアーリークロスをジルーがヘディングで叩き込んで、2-1と再度突き放す。

追い込まれたイングランド。
後半39分のPKをケーンが外し、アディショナルタイム6分のフリーキックをべリンガムが外し、万事休す。

同点後、試合の主導権をどちらが獲ってもおかしくない展開だったが、中盤の攻守において、絶好調グリーズマン、それを支えるラビオとチュアメニのクオリティの差が、結果的に試合を決めた。
イングランドは、ほとんどの選手がプレミアリーグで戦っているせいか、コンディション調整もすごく上手くいっている感じだった。
また、イエローカード累積による出場停止もなく、グループリーグから無敗で、いわば万全の状態だった。
そんなイングランドを、更に盤石な戦い方でフランスが凌駕した、そんな試合だった。

優秀なボランチを輩出し続けるフランス

大会が始まる前、私は、フランスはベスト4にも残れず早々に敗退するかも、と思っていた。
巷での下馬評は高いが、「前回優勝したから安易に優勝候補って言ってるだけじゃないの?」というぐらいに考えていた。

それに、もう一つの根拠というか不安材料は、「絶対的ボランチの不在」である。

フランスは歴代、優秀なボランチを輩出し続けている。
フランスと言うと、プラティニやらカントナやらジダンやらアンリやら、ゴールを量産するフォワードの活躍が目立つ印象だが、いつの時代も強いフランスチームには、必ずものすごいボランチが居た。
古くは、ブランデシャンマケレレヴィエラなど、世界一の呼び声高いボランチの名選手たちだ。

かつての名ボランチである監督のデシャンは、怪我などによるコンディション不良から、31歳のカンテ、29歳ポグバの招集を見送った。
この現代最高ボランチ2人は、間違いなく前回優勝の立役者だし、連覇を狙うフランスにとって「なくてはならないピース」だったハズだ。
同様にベンゼマも招集が見送られたが、この両名の不在はトップ人材よりよほど大きなダメージだったに違いない。
だから私は、フランス優勝などありえない、それどころか相当苦戦するのではないか? と思っていた。
今日の試合を観るまでは。

でもすごいじゃない、27歳のラビオと22歳のチュアメニ。

ごめんなさい。謝ります。
これまではワンサイドっぽいゲームだったのでよくわからなかったが、この両ボランチは、実力の拮抗したイングランドに一歩も引けを取らず、際どいバランスのゲームを見事に制してしまった。
こりゃ強いわ。
そう思い直した次第です。

それにしても、チュアメニの先制点。
もしかして大会ベストゴールになりそうな、目の覚める弾丸ミドルである。
その後PKを与えてしまったトリッピングの反則など、粗削りな面は否めないが、その弱点を補って余りある魅力を放つ。
流石、レアルマドリーが放っておかない逸材。
恐るべし。

この大会は、ムバッペの躍進だけでなく、チュアメニの覚醒としても後世に語られる大会、ということになるかも知れない。

準決勝はモロッコ戦


もうひとつの準決勝アルゼンチン×クロアチアも楽しみだが、私は前回覇者フランスの試合ぶりに、いろいろな意味で注目している。

準決勝のフランスの相手は、ポルトガルを1-0で破ったモロッコである。

初のアフリカ4強となった好調モロッコは、5試合負けなしで、失点は僅か1。
決勝トーナメントに入ってから、1回戦でスペイン、準々決勝でポルトガルを下し、地政学的に言うと、ジブラルタルから欧州大陸に渡ってイベリア半島を占領し、更にピレネーを超えてかつての宗主国フランスに攻め入る勢い、である(笑)。
MFの4番、スキンヘッドのアムラバトの攻守にわたる活躍(まあ控えめに言ってもフィールドのどこにでも顔を出す)にも、目が離せない。

フランスの攻めは、堅守モロッコに通用するのか。
モロッコの速攻を、フランスはどう守るのか。

前回王者フランスがファイナルまで駆け上がるのか、それとも初のアフリカ4強のモロッコが快進撃の物語をファイナルまで続けるのか、興味は尽きない。

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