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シロッコ/フラメンコ・ギターへの誘い・2:サムエリート

半年ほど前に若手の凄腕・ジプシージャズギタリスト、アントワーヌ・ボワイエについて書いた。

この記事の冒頭で選曲した動画 "Zyryab"は、フラメンコギターの俊英・サムエリートとのギターの共演だが、まるで、ビレリ・ラグレーンとパコ・デ・ルシアの共演みたいだ。二人とも20代後半か、メチャメチャ上手いし、音は溌剌としていて若々しい、ソロも印象的だ。

サムエリートは、アントワーヌ・ボワイエを知ったときに初めて聴いたのだけれど、なかなかいい。

1993年生まれで16歳の誕生日にノルマンディーで初コンサートを開催し、フランスでTV放送もされたということで、それほど多作ではないようだが、以来、内外で精力的に活動している。

YouTubeで動画がいくつもあがっているが、パコ・デ・ルシアの再来かと思わせるアタックがきいて粒だった力強い音とスピードを兼ね備えた素晴らしい演奏にうっとりする。何度も聴いているのはパコ・デ・ルシアの曲の演奏だ。

次の演奏もいい。

パコ・デ・ルシアのような情熱はあまり感じさせず、冷静で正確な演奏だと思う。

Spotifyで見ると、アントワーヌ・ボワイエと共演のアルバムが2枚とソロが1枚あがっている。上の動画の演奏が気に入った方は 2017年リリースの "Solo" を聴いてみてほしい。

最近では YouTube でオンラインのギターレッスンを開いている。3日前 (2022/5/16) にもライブ配信していた。シャイな感じがいいが、ちょっと声が小さい。途中で退屈してしまったので、少ししか聞いてないが、そのうち時間ができるようになったらじっくり見て練習したいものだ。

アントワーヌ・ボワイエとともに、サムエリート & フレンズとして、SaveSoilに賛同したコンサートでの演奏が最近YouTube に上がっていた。

演奏者は、Samuelito : (g)、Antoine Boyer : (g)、Yeore Kim : (hmc)、Norig : (vo)、Edouard Coquard : (per)、ということでよく知った友達同士の気さくな演奏といった軽い趣で聴ける。

SaveSoilという運動があることは、今回初めて知った。実際の運動の中身など、まだよく知らないが、いちおうリンクは貼っておこう。環境問題はこれから大きな問題になるだろう。もっと関心を持つべき領域であることは間違いない。


最後に2020年のアントワーヌ・ボワイエとの共演盤もリンクしておこう。


さて、京都の自宅の本棚を見ていたら「フラメンコへの誘い」という本があったので懐かしくパラパラと読み返していた。その中で「鳥肌のドゥエンデ」と題する堀越千秋氏の2ページほどのコラムがあった。

フラメンコを語る時によく使われる「ドゥエンデ」という言葉がある。「黒い魂」とか、「魔物」とか、つまり、心の深い奥底から湧いて出て、人をして鳥肌立たしむるもの、というような意味である。
(中略)
セビーリャの鍛冶屋のサルバドールは
「フラメンコってのは、こう、肌がよ、この辺がよ、ブツブツにならなくっちゃダメだよ」
と言った。

パセオ編集部編「フラメンコへの誘い」 p.96

確かにサムエリートは、テクニックは凄いが端正でシャイな若手の先生といった感じで、デジタル音源や動画での配信という現代にはよく合っている気もする。また、ガツガツした様子がないのも好感が持てる。が、ドゥエンデという点ではまだまだかもしれない。いやいや、フラメンコ・ギターという枠をはめないほうがよいのかもしれない。

パセオ編集部編「フラメンコへの誘い」
冒頭が「人生はフラメンコ」と題する逢坂剛のエッセイで、これがまたよい。


奏でるギターの音や演奏スタイルは私の好きな方向だ。これからいろんなミュージシャンと出会っていくなかで、大化けしていくのではないか、と期待している。



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