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アニカ・ニルス Anika Nilles "Questions"

ジェフ・ベックの今年(2022年)のヨーロッパ・ツアーの動画を見ていたら女性のドラムスが目にとまった。見たことない人だな、と思ってちょっと調べてみたら1983年生まれドイツ出身のアニカ・ニルスだと知った。


彼女は、自身のバンド Nevell を率い今年に3作目、新しいアルバムをリリースしたばかりだ。全曲が彼女の作曲ということで、メトリック・モジュレーションという技を駆使し、バンドのメンバーとも息がぴったりだ。彼女のパワフルなドラムスが楽しい。

1分10秒と短いが全体のテーマを提示するような1曲目もいいし、2曲目の "Questions" はリズムの変化が面白く、もっとストレートな3曲目の"Up and Down" もそれぞれ楽しく聴ける。4曲目の "Clear View" は東南アジアの海辺でパーカッションのアンサンブルを聴いているような内省的な音を聴かせた後、”Boom” から元気のいい3曲が続く、というなかなか楽しい構成だ。

わかりやすいけれどわかりにくい、聞き流せるけど耳をふと傾けてしまう、そんな感じだろうか。曲全体のリズムやノリは一定で変化しないその上に複数のリズムが重畳される。きっちりと計算されたタイミングで拍の上に乗っているのだろう、数学的というか、大きな箱の中にバラバラなサイズの小さな箱をかっちりと隙間なく詰め込んだそんな感じがするのが面白い。

2017年のアルバム "Pikalar"、2020年の "For a Colorful Soul" それぞれ楽しめる。いずれのアルバムも、3分から5分の曲がほとんどで、アンサンブルは王道と言ってよいのではないだろうか、ほどよいディストーションが効いたギターとキーボード、スラップ・チョッパーの効いたベースもいい。

聴きどころはもちろんドラムスだし、他の楽器とのリズムの応酬だが、私の耳では限界がある。とはいえ、それだけに聴けば聴くほど新しい発見があるのも面白い。

バンドのNEVELLのメンバーは固定してバンドの楽曲・演奏として成熟させていきたいという。

"Boom"とともにシングルでリリースされている "Questions" もなかなかいい。ジャケットもオシャレだ。

変拍子やポリリズムというのは目新しいわけではないし、ドラムスがリーダーのバンドというのが珍しいわけでもないし、リズムやドラムスを聴かせるというコンセプトも新しいわけではないし、その点でもっとアグレッシブな音楽もたくさんあると思う。しかし、アニカ・ニルスのように、カチッとした理詰めでメカニカルな感覚の面白さは、他に聴いたことがないように思う。


上質なインストで、ビートが効いていてノリがよく、でも「あれ?これって新しい?」、そんな昔なつかしくしかも現代の感覚を味わいたい人にはバッチリだと思う。これからどんな音楽を作っていくことだろうか。楽しみだ。


■ 関連外部リンク

メトリック・モジュレーションについて。


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