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Ámbar:カミラ・メサ Camila Meza

チリのサンチャゴ出身、ニューヨークを拠点に活動しているカミラ・メサ
のことを知ったのはやはり最近で数年前のことだ。この5月の頭に、アメリカのジャズトランペッター・デイヴ・ダグラス のシングル Overcome を聴き、これに参加しているので、このところ、またよく聴いている。(*1)

We Shall Overcome (*2)も自由な演奏でなかなか悪くない。

ソウルフルなフェイ・ヴィクターのヴォーカルと、いい対比だ。 トロンボーン、ベース、ドラムスとあわせた6人のレコーディングだが、When We Are Together Again というLPとなったということだ。Band Campでは2020年12月に6曲入りでリリースされたとのことで(またしても、迂闊にも知らなかったが。)、Spotify では、この5月に上に貼った2曲ともう一曲を聴くことができるようになった。

カミラ・メサは、日本にも来たことがあるし、知っている人も多いと思う。1985年生まれの若手のジャズギタリスト、ボーカルだ。ボーカルは、エスペランザ・スポールディングとよく似た雰囲気で、高温に伸びるクセのない声で浮遊感のある歌いっぷりがいい。フルアコのギターを弾きこなすスタンダードな演奏で、ジム・ホールを思い出す内省的な音色で、こちらもクセなく非常に上手い。

イヴァン・リンスのポピュラー曲を集めたという2009年のアルバム Retrato がしっとりとしていい。

2016年のアルバム "Traces" 、たぶん、私はこのころに、何かの拍子で知ったのだと思う。

強烈な印象はなかったが、聴いているうちに、楽曲の少し不思議な感覚に魅せられた。冒頭の1曲目もいいし、3曲目、自身の曲だというタイトルトラックも彼女の魅力があふれていて楽しめる。

この動画 2'09"からのギターソロも聴きどころだ。

ソロのほか、室内楽編成のザ・ネクター・オーケストラを率いている。2019年にはアルバム "Amber"を発表している。

表情豊かな楽曲にアレンジもいいし、彼女の得意のスキャットとギターソロとのユニゾンなどのスリリングな聴きどころも隋所にある。このアルバムは、秋から冬の雰囲気があるように思うので、今なら南半球の方には季節感として悪くはないかもしれない。

ラストを飾る "Cucurrucucu Paloma" はギターの弾き語りだ。オフィシャルのビデオクリップも綺麗なので貼っておこう。

ぱっと目につく原色でもなく、強烈な光を発しているわけでもない。茶色と褐色と黄土色を混ぜたような曖昧な色で、しかも透明な、琥珀色・アンバー。じっと聴いているとその魅力にとらわれて忘れられなくなっていく、そんな素敵なミュージシャンだ。



■ 注記
(*1) ライブの動画も2022年5月中ごろにアップされている。こちらは2021年5月のライブ録画ということだが、カミラ・メサがいないので、注記で貼っておこう。ファンキーな演奏でこちらもいい。

それにしてもデイヴ・ダグラスのトランペットもなかなかいいのだ。

2020年のアルバム、ディジー・ガレスピーへのトリビュートもなかなかよかった。ジャケ写もしゃれている。

ネットを検索したら、次の解説が見つかった。これによれば、「まさに無重力の宇宙の視点の、21世紀のビバップ」とのことである。

デイヴ・ダグラス(Dave Douglas)『Dizzy Atmosphere: Dizzy Gillespie At Zero Gravity』ディジー・ガレスピーに捧ぐ、宇宙時代のビバップ | Mikiki


(*2) We Shall Overcome といえば説明はいらないかもしれないが、ジョーン・バエズを聴く必要があるだろう。1969年のウッドストックでのライブがいいので、こちらを選曲。アルバムの最後を飾るのが "We Shall Overcome" だ。

3曲目のボブ・ディランの名曲中の名曲、I Shall Be Released も素晴らしいパフォーマンスだ。

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