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大鳳万[audrey burn]
2019年1月10日 14:35
笑った彼の、全くもって無害なはずの細い目から、恐ろしい程の引力を感じた。引きずり込まれそうな、闇。誰かと似たような、誰か以上の。 「…え、あ!ちゃうわ!自分が危ないって意味じゃなくて…」 己の関西弁による意思疎通の齟齬に気付き、大島は手を振って否定した。この部屋は本がたくさんあって、それが崩れるかもしれないから君が入っては危ないと説明しようと、そう弁解しようとした。しかし弁解の余地はなか
2018年12月31日 14:12
書生として瀬川邸に住まいふた月が経った。季節が初夏へと移ったが、大島の生活は以前より格段に良いものとなった。下宿にいたままなら地獄のような暑さの部屋で原稿用紙に齧り付いていたであろうが、此処はハイカラで冷たい飲み物も扇風機もある。当たり前のように家事を手伝うだけで感謝され、美味しい食事もキチンと三度出てくる。大学に行く日など女中さんが弁当を持たせてくれるくらいだ。まさに何不自由のない、豊かな暮らし
2018年12月29日 21:15
瀬川教授の厚意で瀬川邸へと引っ越すことになった大島は、提案があったその週末、風呂敷ひとつで身を投じた。元々貧乏学生で荷物などろくにないと自認していたが、案内された瀬川の屋敷の大きさが余計に自分がそうであるということを知らしめた。大学のある街中とは少し離れた、田舎町の広大な土地に一際大きく建つ屋敷が瀬川邸。周りは田舎臭い畑や田んぼに囲まれていながら、そこだけは和洋折衷の洒落た日本家屋が美しい景色を造