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【人事に効く論文】内発的動機付けとパフォーマンスの正しい関係

Cerasoli, C. P., Nicklin, J. M., & Ford, M. T. (2014). Intrinsic motivation and extrinsic incentives jointly predict performance: a 40-year meta-analysis. Psychological Bulletin, 140(4), 980–1008.

1. 90秒で分かる論文の概要

内発的動機付けと外発的動機付け、そしてパフォーマンスとの関係について、過去40年分の先行研究結果をメタ分析した論文です。約1,000の論文をサーチし、154の情報源から得た21万人分のデータを元に、以下の仮説を検証し、すべて統計的に有意であることを明らかにしました。

仮説1A:内発的動機付けはパフォーマンスと正の相関がある
仮説1B:内発的動機付けとパフォーマンスとの相関は、量型タスクよりも質型タスクの方が強い

仮説 2A: インセンティブが付与される場合、内発的動機付けとパフォーマンスの相関は、パフォーマンスと間接的に紐付くインセンティブによって正に調整される(強められる)
仮説 2B: インセンティブが付与される場合、内発的動機付けとパフォーマンスの相関は、パフォーマンスと直接的に紐付くインセンティブによって負に調整される(弱められる)


仮説3A: パフォーマンスの「量」の観点では、外発的動機付けは内発的動機付けよりも優れた予測因子である
仮説3B:パフォーマンスの「質」の観点では、内発的動機付けは外発的動機付けよりも優れた予測因子である

これらの仮説をイメージとして図示すると、こんな↓感じだそうです。左のグラフが仮説1A・B、右のグラフが仮説2A・Bを表しています。

2. 私的な解説/感想

この論文によると、内発的動機づけとパフォーマンスの関連についての研究は多いものの、メタ分析を行った例はこれまでなかったそうです。そこにこの論文の価値があり、特に”アンダーマイニング効果”、すなわち「最初は楽しいタスクであっても、インセンティブが提示されることで、その後のタスクに対する内発的動機づけが低下してしまう現象」について、詳しく検証している点が面白いです。
また、パフォーマンスを「量」と「質」に、またインセンティブを「直接的」と「間接的」に分けていることにも腹落ち感がありました。参考までに、内発的動機付け(Intrinsic motivation)および外発的インセンティブ(Extrinsic incentive)と、パフォーマンスの量(Quantity)・質(Quality)の相関を示したのが以下の表になります。

3. 読後の余談

約20年前、E.L.デシらによる書籍『人を伸ばす力』を読みました。以来、同書は私の読書歴の中でも数少ない白眉の一冊です。アンダーマイニング効果という現象を知り、若き日の私が衝撃を受けたことを今でも覚えています。人事部門の方でもしも未読であれば、是非手に取ってみてください。

2024年3月17日 初稿作成

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