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【人事に効く論文】ジョブ・ディスクリプションは更新しなけりゃ意味がない

Al-Marwai, S. A., & Subramaniam, I. D. (2009). A review of the need for writing & updating job descriptions for 21st century organizations. Methodology: European Journal of Research Methods for the Behavioral & Social Sciences, 12(2), 241–251.

マレーシアにある大学の講師(今は准教授)によるジョブ・ディスクリプションに関する論文です。マレーシアの国際企業126社を対象にジョブ・ディスクリプションの運用状況に関するアンケート調査を行い、その結果を集計した内容になっています。他の論文での引用数は非常に少ないマイナー論文ですが、海外のジョブ・ディスクリプション情報として面白そうだったので読んでみました。

1. 5分で分かる論文の概要

下表の通り、クアラルンプール・ペナン・ジョホールバルのメーカー55社、サービス業71社の計126社が調査の母集団です。主な回答者は人事担当役員および管理職になります。

そして気になる回答の主な結果は以下の通りです。

あなたの組織には、ジョブ・ディスクリプションを更新するための適切な仕組みがありますか?
Yes 67%
No 20%

組織変化の激しさがゆえに、ジョブ・ディスクリプションを更新する仕組みが必要ですか?
Yes 85%
No 15%

ジョブ・ディスクリプションの更新は非常に重要だと思いますか?
Yes 78%
No 22%

ジョブ・ディスクリプションを更新する仕組みがあることによって、何が改善されましたか?
組織的効率性の向上 37%   
生産性の向上 24%   
採用・登用における適任者選出 28%
特になし 11%

2. 現場目線の解説/感想

上記の回答結果から、ジョブ・ディスクリプションを常に更新し続けることの重要性が垣間見えたのではないでしょうか。気になるのは更新頻度ですが、論文内にはこういった記述がありました↓。
「安定的な企業であれば年一回で十分かもしれないが、動きの速い企業であれば四半期に一回が適切だろう。場合によっては臨時の更新も必要かもしれない」
つまり、ジョブ・ディスクリプションを作成してから、数年放置されているといった状況はあり得ないのです。

また、Dessler, G. (2008). Human Resource Management.によれば、ジョブ・ディスクリプションは採用だけでなく、パフォーマンス・マネジメントにおいて以下の役割を果たすとされています。
• Direction sharing 方向性の共有
• Role clarification 役割の明確化
• Goal setting 目標設定
• Developmental goal setting 成長目標設定
• On-going performance monitoring 継続的なパフォーマンス・モニタリング
• On-going feedback 継続的なフィードバック
• Coaching and support コーチングと支援
• Performance appraisal パフォーマンス評価
• Rewards, recognition and compensation 報酬
• Work flow, process control and return on investment management ワークフロー・業務プロセスコントロール・ROIの管理
ある意味、ジョブ・ディスクリプションがここまでマネジメントに組み込まれていれば、数年放置されてしまう状況は考えづらいです。

3. 読後の余談

日本国内法人においてジョブ・ディスクリプションを運用している日本企業はあまり見たことがありません。マレーシアとはいえ、100社以上を母集団とする本調査結果は、ジョブ型を検討している日本企業にとって参考になるのではないでしょうか。ジョブ・ディスクリプションの仕組み的な難しさは、その導入よりも、アップデートし続ける運用にこそあるのです。

2023年10月9日 初稿作成

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