【人事に効く論文】女性を軽んじるような職場は、男性も含めて風土が悪化する
1. 45秒で分かる論文の概要
職場での女性を軽んじるような取り扱いが、同僚に対してどう影響を与えるのか、調査・分析した論文です。米国の小規模な公立大学の全職員を対象に実施されたアンケート調査への回答1702名分(内、女性51%)を分析し、以下の仮説が検証されました。
仮説①:職場において「女性に対する悪意ある取り扱い(差別的な言動やセクハラ)を目撃」し、「組織はセクハラに対処していないと認識」することが、従業員のウェルビーイングの低下に関連する
→ 支持された
仮説②:上記のウェルビーイングの低下が、組織から心が離れる結果(organizational withdrawal)に関連する
→ 部分的に支持された
2. 私的な解説/感想
この論文のポイントは、セクハラなどの反社会的行為が、対象の女性本人ではなく、それを目撃した職場の同僚に対してどのような影響を及ぼしているかを数値で明らかにしたことにあります。分析の結果、以下のパス図の通り、職場風土への様々な悪影響が明らかにされました。
念のため、パス図が示す内容を説明しておきますと、まず、敵意ある取り扱いの目撃(Observed Hostility)と、同僚の心理的ウェルビーイング(Psychological Well-Being)および職務満足度(Job Satisfaction)に負の関連があります。また、セクハラへの非対処(Unresponsive to Sexual Harrassment)は職務満足度と情緒的コミットメント(Affective Commitment)に負の関連があります。そしてこれらが燃え尽き(Job Burnout)と離職意思(Job Withdrawal)の増加に関連していることを示しています。男性の方がセクハラを甘めに見がちという印象を持っている方もいるかもしれませんが、同僚の性別を問わず、同様の結果になったことが論文内では詳しく説明されており、かなり興味深いです。
3. 読後の余談
女性を軽んじるような取り扱いが、性別を問わず、同僚にも悪影響を与え、それが離職にもつながる。この論文の示唆を簡単にまとめると、こんな感じです。私が着目したいのは「離職につながる」の部分。調査が行われた米国は転職社会であり、実際に離職につながることでしょう。しかし日本においては離職という分かりやすい結果にはならず、マイナスの影響が職場風土にじわじわと堆積していき、ヘドロ化してしまっているのではないでしょうか。労働市場が硬直的であることは、こんなところにも悪影響を及ぼしています。
ちなみにトップ画像はChatGPTで描画しました。この論文の内容をイメージさせるとてもいい画像だと自己満足しています。
2023年11月11日 初稿作成
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