あの感動をもう一度味わいたい。


美味しい食事も楽しめるカフェ。

このお店に行くのは2回目だ。

ピザがあまりも美味しくて最後の一切れまで感動したのを覚えている。

この日はゆるふわな女性客が集っていた。

流行りのメイクに髪を巻いて、鮮やかな色のニットを着て、まつ毛も綺麗にカールしている。

どの席もきらきらしていた。

このきらきらに紛れた素朴な私は、そんな事ないって分かっているのになんだか場違いな気がしてちょっと萎縮してしまっていた。

この日はピザを2枚注文して友人と2人で分けて食べた。

初めてこのお店に来て食べ同じものを頼んだ。

一口食べてあの日の感動を思い出した。

お腹も空いていたので夢中で食べた。

8つくらいにカットされた最後の一枚を食べる頃にはこの環境にすっかり慣れて、背筋も伸びていた。

友人が最後の一枚を食べた時、
私は口に手を当てて「ふふふっ」て笑った。

あれ、私今なんで笑ったんだろう。

そもそもそんな可愛らしい笑い方なんて普段しないのに。

何が面白かった訳でも微笑ましかった訳でもないのに、
ふと【女の子をしている】感覚になった。

29歳、覚えたての笑い方で急に女の子はじめました。

自分が自分じゃないみたいで変だった。

こんなに環境に飲まれやすかったっけ?

この日食べたピザは初めてこのお店に来て食べたピザより感動が薄かった。

4枚目くらいまでは感動していたはずなのに自分が自分から離れると感覚も鈍くなるみたいだ。

「もっと美味しかったのに。」なんてピザのせいにしちゃったけれど味が変わってしまったと思ってしまったのはきっと私が変に女の子をはじめたせいだ。
ちょっと憧れていたのかもしれない。

誰が求めた訳でもないのに環境に見合うだろう自分を装ったせいだ。

自分が自分じゃなくなっていく違和感のある時間を過ごした。

後になってみれば面白い気づき。

もし明日もこの店に行くとしたら、あの感動を求めてまた同じピザを頼むと思う。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?