分数を含む割り算はなぜ割る数の分母と分子をひっくり返して掛けるのか
分数同士の割り算を初めて小学校で習ったとき、なぜ割る数の分母と分子をひっくり返して掛けるのか疑問に思うことが多いのではないかと思います。
特に、小学校の先生は「そういうものだから」と言って教えない場合が多かったのではないでしょうか。
今回は、そんな疑問を払拭しようと思います。
1 どのように求めるか
どのように求めるかはこうです。
途中式はどうなるかというと、任意の数$${a,b,c,d}$$(正の整数で$${a≠0 c≠0}$$)に対して$${\frac{\normalsize b}{\normalsize a}\times\frac{\normalsize d}{\normalsize c}=\frac{\frac{\normalsize b}{\normalsize a}}{\frac{\normalsize d}{\normalsize c}}= \frac{\frac{\normalsize bc}{\normalsize a}}{\normalsize d}=\frac{\normalsize bc}{\normalsize ad}=\frac{\normalsize b}{\normalsize a}\times \frac{\normalsize c}{\normalsize d}}$$
になります。
2 分数の性質・定義とは?
◎分数の定義
分数の定義は
というように表せられます。すなわち、ある数をある数(0ではない)で割った数が分数ということです。
◎分数の性質
分数の性質として次のようなものがあります。
この性質は、約分をするときや、分数同士の加法の計算をするときに用いられる性質です。
では、なぜこれが成り立つのでしょうか。それは、割り算とは何かを考えればわかります。
高校数学では割り算の原理として次のように出てきます。
ここで、(算数で習う用語を使うとするのならば) a は割られる数、b は割る数で q は商で r は余りです。
ここで0ではない任意の数 n を a と b に掛けてみます。これは、分数で表すと a は分子、b は分母ですね。
$${a=bq+r}$$の式を等式の性質(=記号の左右の式に同じ数を足したり引いたりしてもその等しい関係は変わらないという性質)より変形して、$${r=a-bq}$$(この式を1とする)。では、実際に a と b に n を掛けてみましょう。$${na=nbq+r}$$→$${na-nbq=r}$$分配法則より$${n(a-bq)=r}$$(この式を2とする)ここで、1の式も2の式も余り r であることに変わりはないため最初に挙げた分数の性質が成り立ちます。
3 実際に証明!!
このことから、冒頭のような式変形が成り立ちます。
任意の数$${a,b,c,d}$$(正の整数で$${a≠0 c≠0}$$)に対して$${\frac{\normalsize b}{\normalsize a}\times\frac{\normalsize d}{\normalsize c}=\frac{\frac{\normalsize b}{\normalsize a}}{\frac{\normalsize d}{\normalsize c}}= \frac{\frac{\normalsize bc}{\normalsize a}}{\normalsize d}=\frac{\normalsize bc}{\normalsize ad}=\frac{\normalsize b}{\normalsize a}\times \frac{\normalsize c}{\normalsize d}}$$
3番目の式は分母分子に c を掛けています。4番目の式は分母分子に a を掛けています。最後の式は次の性質を使っています。
このようにして、分数同士の割り算は割る数の分母と分子をひっくり返して掛けることで計算できます。
これで、小学校の時感じた疑問は払拭できたのではないでしょうか。ほかにもこの話も含めて算数や数学で習った事柄を証明するのは楽しいなと思っていただければ幸いです。
[この記事は、個人的な見解を含むので誤りが含まれている場合があります。誤りの部分についてはコメントでご指摘していただけると幸いです。]
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