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古街道 -『万葉集』の「手児の呼び坂」-

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 「手児(てご)の呼び坂」は、「手児(地名)」の「呼び坂」(坂の名)でしょうけど、和歌では「手児の呼び坂」で、「恋人の名を呼ぶ坂」という歌枕になっています。

『万葉集』「東歌」「雑歌」(作者未詳。巻14-3442番歌)
安豆麻治乃 手兒乃欲妣左賀 古要我祢弖 夜麻尓可祢牟毛 夜杼里波奈之尓
あづまぢの てごのよびさか こえがねて やまにかねむも やどりはなしに
東路の手児の呼び坂越えがねて山にか寝むも屋戸(宿)りは無しに
【歌意】東国の「手児の呼び坂」を越えられなくて、山中に(一人で)寝るのかなあ。宿はない(彼女もいない)のに。

『万葉集』「東歌」「相聞」(作者未詳。巻14-3477番歌)
安都麻道乃 手兒乃欲婢佐可 古要弖伊奈婆 安礼波古非牟奈 能知波安比奴登母
あづまぢの てごのよびさか こえていなば あれはこひむな のちはあひぬとも
東路の手児の呼坂越えて去なば我れは恋ひむな後は逢ひぬとも
【歌意】東国の「手児の呼び坂」を越えて去ってしまえば(恋人の姿が見えなくなって)、私は恋しく思うだろう。後に会ったとしても(またすぐに会えるというのに)。

◆「手児の呼び坂」の比定地
説①:「手越」の坂:盗人坂(静岡市駿河区向敷地)
説②:宇津山の坂:宇津ノ谷峠(駿河区と藤枝市の境)
説③:七難坂(清水区蒲原):天保14年(1843年)開削の「新坂」の西
説④:磐城山(薩埵山。清水区由比西倉澤)の坂:薩埵峠
説⑤:富士市宇東川東/西町の坂
説⑥:清岩寺(富士市宇東川西町)の前の坂
説⑦:手児の呼坂(富士市今井)
説⑧:原田公園(富士市原田飯森東)
など、全て静岡県。

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