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【読書の秋】高田崇史『古事記異聞 鬼統べる国、大和出雲』(講談社)を読んでみた。

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『古事記異聞』は、主人公の橘樹 雅(たちばな みやび)が神社巡りをして、日本古代史の謎を解くという、神社考古学の本です。この小説の内容は、主に、「三輪山を神体山として崇めているはずの大神神社の拝殿が三輪山山頂を向いていない理由の解明」になります。

★大神神社
http://oomiwa.or.jp/

 さて、『古事記異聞』では、日本古代史の謎を解くには、出雲、伊勢、?の3ヶ所へ行かないとダメだとしていて、『古事記異聞 鬼統べる国、大和出雲』で出雲編が完結し、次からは伊勢編のようです。(3ヶ所目は謎ですが、「丹後」だと予想してみる。話の流れからは「丹後」を「出雲」の派生だとして、3ヶ所めを「吉備」とするような気がしますが、伊勢へ行ったら、元伊勢・籠神社(丹後一宮)へ行きたくなるんじゃないかと;)

 同氏の著作物が奇妙なのは、「邪馬台国の所在地は北九州か、畿内か」と言われている時代なのに、出雲、大和、伊勢などを取りあげ、北九州を取りあげていないことです。何故なんだろう? 日本古代史の謎を解くには、北九州の存在は欠かせないと思うのですが・・・。

 また、タイトルは『古事記異聞 鬼統べる国、大和出雲』ですが、「鬼」という単語は、本文では1度も出てこなかった気がします。なぜ大和出雲が「鬼統べる国」なのか不明です。どういう意味なんだろう?

 ──「大和出雲」とは?

 私に言わせれば、「大和が首都であった証拠」です。「出雲丹波」については数行で軽くスルーされてしまいましたが(p.213)、「大和出雲」は出雲国大和出張所、「出雲丹波」は丹波国大和出張所の所在地で、各国の国衙の別館があるということは、そこが首都である証拠でしょう。

★参考記事「出雲」
https://note.com/sz2020/n/n21dda126e5a8

大神神社について語るのに、率川神社を出してきたことは面白いなと思いましたが、個人的には「なぜ「ゆりまつり」が大神神社で行われず、離れた率川神社で行われるのか」もっと掘り下げるとか、石上神宮のかわりに大神神社別宮・村屋坐弥冨都比売神社を取りあげて欲しかったです。

★率川神社
http://isagawa-jinja.jp/
★村屋坐弥冨都比売神社
http://murayajinja.com/

「三輪山が神名備とされたのは、江戸時代以降」という指摘も面白かったです。古代大和の祭祀施設は、竜王山を向いていることが発掘から分かっています。古代大和の神名備は、三輪山ではなく、竜王山なのでしょう。

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