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同居義務違反ってなんなんだ!私って間違ってますか?--連載05

前回の連載04では、民法770条の法定された離婚原因というものを見てまいりました。今回は、その延長として同居義務や同居義務違反についてお話をしたいと思います。これについては出て行かれた相手に対して「同居義務違反ではないのか?慰謝料は認められるのか?」、または出ていった方からは、「同居義務、扶助義務違反になってしまうのですか?」というご質問が多いものです。そして、単に同居を拒めば同居義務違反であると思われている方が多いようですので、具体例を織り交ぜながら説明をしていきたいと思います。

(1)夫婦の同居義務、同居義務違反とはどのようなことを言うの?

同居義務というのは言葉通りで、簡単に言えば”夫婦は一緒に暮らして協力していかなければならない”という扶助義務、協力義務とセットのようなものですね。

ただ、どんな場合でも同居が義務づけられてしまえば、結婚したという理由のみで一方の権利が制限されてしまうことになりかねませんよね。

また、別居にあたって必ず双方で合意をつけておかなくてはならないとすれば、暴力などからやむを得ず逃げた場合にまで責任を問われることになってしまいます。これは一般的に考えてもおかしな話しです。では、どういった場合に同居義務違反と言えるのでしょうか。

たとえば、皆さんが”出ていかれてしまった・・”でイメージされるのは、

(a) 相手方配偶者が一方的に離婚請求をして実家に戻ってしまった
(b) 同居の親族とうまくいかず出て行ってしまった
(c) 愛人宅から帰ってこない
(d) 転勤先について来てくれない
(e)積み重ね・・とだけ言われて、突然居なくなってしまった

というようなものかと思います。

これらは、切り口によって、同居義務違反にあたる場合、そうならない場合の両面があるということになります。

どういうことかと言えば、家を出て行った・一緒に暮らしていないということに正当な理由があるかどうかで、判断が変わってくることになるわけです。
ですので、夫婦仲が悪く、いつ離婚、離婚請求をされてもおかしくないような場合であれば、お互い同居は苦痛なのですから(もちろん、我慢して出ていかない側の方も居るわけですが)、一方が出て行っても、出ていく理由としては特に問題はないでしょう。当然、事情はあったとしても離婚をしたくない側としては、たまったものではないかもしれませんが。

いずれにせよ、何ら夫婦間に問題がなかったのに、突然春が来たかのように愛人を作り、そこから帰ってこないというような場合は、まさに同居義務に違反してくる可能性が出てくるわけです(こちらは、同居義務違反以前に不貞が問題になるわけですが)。

また、同居している相手方の親族とうまくいかず出て行ってしまったというようなケースでは、親族側の配偶者が、間に入ってうまくゆくように努力したのか、または夫婦で家を出るなど、夫婦仲を維持するための努力はできるはずですので、それをせずにいれば、相手が出ていった事に正当性があると言えるかもしれません。

そしてもう一つ、これが意外に多いのですが、“相手方配偶者が転勤先について来てくれない”というものです。たとえば夫婦共に仕事に就いていて、どうしても一方について行けないですとか、病気があって専門の病院から遠くには行けない、というような事情があれば、それは正当であると思います。

けれど、住み慣れた土地を離れたくないだとか、友人と離れるのが嫌だ、というような理由は正当性があるとは言えません(如何様な理由であっても、もう一方の配偶者がついて来ないことに同意しているような場合は、当然に同居義務違反にはなりませんよ)。

ですが、ここで注意をしたいのは、同居義務違反=離婚原因という単純な話ではありません。

(2)悪意の遺棄ということを聞いたことはありませすか?

簡単にいえば、同居義務違反と扶助義務違反がセットになったものという理解でよいかもしれません。これについては、連載04(3)民法770条第2号 配偶者から悪意で遺棄されたとき、に記載していますので、そこを読んでみてください。悪意の遺棄という法定離婚原因と同居義務違反を混在している方もおられますが、法的に大きな問題になるのは悪意の遺棄の方ですね。同居義務をしていても、婚姻費用(別居中の生活費)をしっかり支払っていたりする場合には、扶助義務違反にはなりにくいものですから、悪意の遺棄には該当しないことがあるわけです。

(3)同居義務違反にあたる場合は何を請求できるのか?

相手方配偶者が同居義務に違反している場合には、同居を求める調停(円満調停)や、内容証明郵便での同居請求などはできるでしょうが、いずれにしても、同居というのは強制になじむものではありませんから、法律をもっても実力行使をすることはできません。

また、そういった手立てをとれば夫婦仲が悪化することもあるでしょうから、確かに円満調停等も方法の一つでありますが、それを申し立てる前の準備や、タイミング、また調停の中でどのような主張をしていくのか等は、よく考える必要があります。

いずれにせよ、正当性がないのに同居を拒み、こちらからの再三の呼びかけに応答しない、あげく本来払うべき生活費も入れないようであれば、それは“悪意の遺棄”という法定された離婚原因にあたる場合もありますから、それに該当すれば、離婚だけではなく慰謝料も請求をすることができることになります。

とはいえ、夫婦の事情や価値観は様々ですから、こうした状態であっても離婚はしたくない、修復したいという方も多いですよね。夫婦の齟齬を解消するための夫婦カウンセリングなどができればよいですが、なかなか相手方が承諾はしてくれないものかと思います。あくまで事情如何ですので、修復を目指すためのアプローチなどは、事情を考慮したうえで検討していきたいところです。この辺りに関しては、個別にお話を聞かせていただきながら進め方の説明をさせていただければと思います。ご相談にはのれますので、ご必要を感じましたら、僕へ相談を寄せてください(離婚と修復のおきがる相談室←リンク)。

なお、特に理由が思い当たらないのに、相手方が出て行ってしまい、どこにいるかもよく分からず、ようやく話し合いができたのに、理由が曖昧で、感情が高ぶっているような場合があります。

たとえば、「(夫→妻)家事ができていない」「(妻→夫)女性としてみてくれていない」というような理由をあげて、「離婚して欲しい」と繰り返すような場合でしょうか。こうした場合は、異性関係のある可能性が高いと思いますが、たとえそれに気付いても、ご自身が離婚・修復のどちらを考えているかに関わらず、その場で追求をするのは避けた方がよいと思います。下手に追求をすることで、今後証拠が取りづらくなることもありますし、ご自身が修復を目指す場合でも、そこで感情的になってしまえば、相手方も引くに引けなくなってしまいますから、その場での追求は避けた方がよい場合があります。

(4)コラム ~ 別居後の不貞(浮気)は免責されるのか?

別居中に浮気が発覚して有責配偶者になったというケースは多いものです。羽根が伸びたのか、以前から浮気をしていたのかは分かりませんが、いずれにしても別居後からの浮気も多いものです。

当人としては、どこで知識を入れたのか「夫婦関係は破綻しているのだから不貞にはあたらないし、慰謝料も発生しない」と堂々と言われるのですが、
ただ、勘違いをしてはいけないのが、夫婦関係が破綻しているかどうかを判断するのは、当人ではなく裁判官だということです。

それに、夫婦関係の破綻というのは、そう簡単に認められるものではないわけです。何年も別居をしていれば別ですが、1~2ヶ月程度別居したからといって、「夫婦関係が破綻しているから不貞をしても責任はない・・」と言えるかといえば、それは難しいのではないでしょうか。

確かに、何年か別居した後に、異性と関係を持ってしまった場合で、その別居数年後に証拠を撮られたという場合には、免責されることはありますが、とはいえ、別居してすぐの不貞については免責されるものではありません。

ちなみにですが、僕も夫婦関係の仕事をするまでは、こんなにも興信所が利用されている事を知りませんでした。想像以上に利用されている方は多いものなのですね。

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