夫婦カウンセリング:あいさつのできない89歳の男性のとった行動とは?-連載15
今からする話は、ちょっと変わった話になりますが、かつて2回同じような話があったわけです。
(1)俺はもう89歳になるんだよ。今更この歳で挨拶なんてできない!
この御年になって離婚なんて無いと思うかもしれませんが、時折80代のご夫婦のカウンセリングを行うことがあります。
この歳になれば、かつての夫婦の問題は薄れてしまっていると思われるかもしれませんが、それは無いと考えた方がよいのかもしれません。少なくとも、そういう気持ちで生活をして、幾つになっても心掛けた方がよいと思う次第です。
同い年の奥様は、60年前からの不満を夫へ伝えます。
夫は覚えていないといいます。
けれど、奥様の中には結婚して60年経っても、まだその問題は継続し続けています。怒りではなく、恨みですから、そう簡単に自分だけで消化して消しさることはできません。
それでも、長年一緒に暮らしてきたわけで、良いこともあったわけですから、なんとか折り合いを付けて生活をしてきているわけです。
ただ、折り合いはつけつつも、
朝の挨拶、食事前の挨拶、ありがとうの一言、
これがないがために、心の中のモヤモヤというか、上下関係というか、亭主関白というか、いずれにしても、公平性が無いと感じるわけです。
そこで僕に相談があって、結果としてカウンセリングを数回だけ行うことになりました。
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(2)89歳の夫婦カウンセリングとは
正直、夫婦カウンセリング自体が、まだ市民権を得ていないというか、まずはカウンセリングからという文化は根付いてはいない中、それでも応じたご主人なので、それなりの想いというのはあったと思います。
いずれにせよ、奥様は離婚をしたい。
夫は何を今更という印象。
ただ、奥様も絶対にという話では無いのでしょう。
あいさつさへしてくれれば、まだ折り合いがつくと言います。
出かける時に「行ってきます」もない、
こちらが帰って来た時にも「おかえり」もない、
食事前の「いただきます」もない、
「おはよう」「おやすみ」もない。
会話はあっても、自分の話しかしない。
そんな中では生活はできないと。
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ただ、ご主人は言います。
今更、この歳になって、やってこなかった事なんてできない!
恥ずかしさもあるのでしょうし、俺は言わずに言っているんだ・・的な、
気持ちの中では言ってるつもりだからいいだろ・・という話をされます。
けれど、奥様は譲れません。
(3)なぜ今になって離婚の話をされたのか?
実は、このご主人は、今はもう居ません。他界されています。
奥様が離婚の話を切り出したのは、
夫にガンが分かった時です。
もう長くはないということが分かったタイミングでした。
奥様の中では、自分の中の恨みのようなものが残った形で一人になっていくことがおイヤというか、言葉が難しいですね。
そういう想いを残してはおきたくなかったのでしょう。
この話は、もう何年も前の話ですが、2件近しい話がありました。
どちらもガンが分かってからの話です。
ご主人も、なぜこのタイミングで・・というのは分かっていたと思います。
(4)夫がとった態度とは・・
はたから聞いていれば笑ってしまうような話ですが、
ご主人がとった行動というのが、
3つ、4つ程だけ録音しておけるおもちゃありますよね。
録音して登録しておけば、そのボタンを押すと録音が流れるというやつ・・
そこに、「おはよう」「ありがとう」「おかえり」「いただきます」と録音して、奥様がおはようと言うと、ボタンを押して「おはよう」を返す・・という、
それで対応したわけです。
僕的には「えっ!」という感じなわけですが、
それでもよかったようです。
さすがに、これからまだ長い人生を・・という、年齢だけの話ではないかもしれませんが、そういう状況では、納得など無い対応かと思うわけですが、
奥様はそれでもよかったようです。
今回は、最近、年齢層の高い方からのご相談が多くなってきた印象があって、そこでちょっと思い出したので書いてみましたが、
ただ、人それぞれ・・と言いたいわけではありませんし、
恨みつらみが消えないと言いたいわけでもありません。
最近、相手に対する興味関心というものを忘れがちになっていませんか?
ということを振り返ってもらいたくて書いた次第です。
基本なんですよね。相手に対する興味関心というのは。
ということで、
修復でも、離婚でも、まだそういう気持ちにまでなっていなくても、ちょっとモヤモヤするということがあれば、僕に相談してみてください(←クリック)。
行政書士松浦総合法務オフィス 松浦智昌
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