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筋力低下と宇宙

Q筋肉ってなに??


筋肉とは筋繊維という繊維状の細胞が束ねられて構成されているものです。
筋肉には平滑筋と横紋筋の2つの種類があります。平滑筋は内臓や血管の壁にあり、緊張や収縮で内臓や血管にあります。
横紋筋には骨格筋と心筋があります。骨格筋は姿勢を保つ、体を動かしている筋肉です。心筋は心臓を構築している筋肉で、心臓以外の場所には現在は存在しません。
骨格筋は自分の意志で動かすことができますが(随意筋)、心筋や平滑筋は自分の意志で動かすことはできません(不随意筋)。随意筋は運動神経支配であり、不随意筋は自律神経支配です。
骨格筋は大きく分けると赤筋と白筋に分けられます。
白筋は速い運動に関係(速筋)します。主としてグリコーゲンを元として、ピルビン酸を使用しエネルギーを産生します。海底に横たわるヒラメは白筋からなる代表的な魚で餌がくると瞬発力を生かして餌を捕まえます。短距離選手に多い筋肉と言われています。
赤筋は収縮が遅く(遅筋)、姿勢の保持に関係するので抗重力筋ともよばれます。白筋にくらべて、ミオグロビンが多く、脂質に富み、ミトコンドリアは大型で数も多く存在します。カツオやマグロは赤筋の代表的な動物です。 長距離選手に多い筋肉と言われています。
組織化学的に赤筋線維はタイプⅠ 線維、白筋線維はタイ プ Ⅱ線維表現されます。タイプⅡ線維は持続的収縮向いているタイプⅡa、そうでないタイプⅡbに細分されます。

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Q宇宙飛行での筋萎縮


宇宙飛行の筋萎縮は歩行に関する部分に顕著に出てきます。特に抗重力筋といって、重力に逆らうことに主に利用されるような筋肉が萎縮しやすいです。具体的には①ふくらはぎ:下腿三頭筋② 太もも:大腿四頭③お尻:大臀筋④腹筋:腹直筋、腸腰筋⑤背中:脊柱起立筋、広背筋などの筋肉のことを言います。これらの筋肉は遅筋=赤筋です。宇宙飛行も長期臥床も筋肉の萎縮は最初の1-2週間が最大の速度で萎縮していきます。具体例としては、下腿三頭筋で約1%/日で、その後に萎縮速度は減速していきます。6ヶ月の国際宇宙ステーション滞在後には、毎日2時間の運動を行っても平均で10-20%の筋肉量、筋力の低下が生じます。
加えて遅筋=赤筋=タイプⅠ 線維が速筋=白筋線維=タイ プ Ⅱ線維へ変化していく現象も生じます。
加えて心拍出量が減る関係から心筋も萎縮する可能性が指摘されています。

Qサルコペニアと宇宙での筋力低下の違い


サルコペニアは加齢で筋萎縮が生じ、筋肉の横断面積は低下し、筋線維数は減少し、速筋優位に萎縮して、遅筋化が進みます。
一方で宇宙での筋力低下モデルとされているベットレスと研究などの長期臥床による不活動性筋萎縮は、筋肉活動量の低下で筋萎縮が生じ、筋肉の横断面積は低下し、筋線維数は変化なく、遅筋優位に萎縮して、速筋化がみます。
長期臥床と宇宙での筋萎縮の違いについては、筋肉内の重力感知システムや病理学的な相違の指摘はあるもののまだ多くはわかっていません。

Q宇宙飛行士の運動トレーニング


心肺機能と筋機能の維持を目的として、有酸素運動と筋力トレーニングを毎日2時間も行っています。
有酸素運動は自転車エルゴメータでインターバルトレーニング、ファルトレックトレーニングなどを行います。トレッドミルを使用する場合は肩と腰を保持するハーネスとバンジーコードを使用して体軸荷重を加えて行います。
筋力トレーニングは特別な機器を用いて筋肉へ負荷刺激を与え、筋肉の維持向上を図ります。

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Q最新の研究ピックアップ


・首の筋力は微小重力環境では低下しにくい
・体幹の筋力も5%前後低下するが、それはDXAではわからず、少なくともCTで撮影して初めてわかった
・インプラントを埋め込んで筋力低下予防

【参考、引用文献】
宇宙航空医学入門 宇宙飛行の筋変化
人体と正常構造と機能
Front Physiol . 2019 Sep 13;10:1115.
Ann Biomed Eng . 2021 Feb 18.
https://www.nasa.gov/mission_pages/station/research/news/rodent-research-6-results-muscle-growth

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