包装紙でブックカバーを作る話

紙の本が好きだ。
世の中はおそらく圧倒的に電子書籍を購入する流れになっていて、自宅の収納スペースを考えると私もまたそろそろ電子書籍に移行すべきであると解っていながらも、紙の本を買う。
真新しい本のさらりとした手触り、角張ったかど、鮮烈な帯、特有のインクの匂い。私は紙の本が好きなのである。新しい本、というものが好きなのだ。
古本には古本の魅力があるが、それはそれとして、真新しい本がまとうあのきらめきはなんなのだろう。そのきらめきを守るために、私は基本的にブックカバーを着せる。学生時代から、本屋さんでは必ず「ブックカバーをお願いします」をおまじないのように繰り返していた。
本屋さんのブックカバーは、店舗さんにもよるが、その本屋さん(あるいはその系列の)だけのもので、ずっとそこでブックカバーを頼み続ければ、当然気付けば同じブックカバーの本が山積みになることになる
。どれがどの本なのか、何巻なのか、毎回毎回本を開いて確認しなくてはその本がどんな存在なのか認識できない。それでもブックカバーを着せ続けるのは、その本の真新しいきらめきを守り続けたいからなのだが、まあ不便だ。とにかく不便なのである。
最近は収納スペースの限界を迎えて本の買い控えにまでなってしまった中で、だからこそ手持ちの本のきらめきをより輝かせるために、ブックカバーを自作することにした。そういえば今よりももっと日常的に本を買い求めていた学生時代にも、たま〜に作っていたなあと他人事のように思い出したが、最近のブックカバー作りはいつも新鮮なときめきを感じる。
別にわざわざ布を買い求めて、とかではない。そんな大それたことができるのなら本屋さんでブックカバーを頼む真似はしなかった。
私のブックカバーはいつだって、たまたま手に入れることができるうつくしい包装紙だ。
妹から送られたお菓子の包装紙。通販で買い求めたアクセサリーの包装紙。箔押しで有名な某印刷所さんがおまけで入れてくれた包装紙。そんなたまたま手にいれることができた運命を、お気に入りの本のカバーにするのがたまらなく楽しい。
私はこの本を愛し、着飾り、守り、輝かせているのだという自己満足である。包装紙はたいてい一冊の本に与えるのが限界であり、だからこそ余計に運命であると思うのかもしれない。
世間でありふれている本が、私が包装紙でブックカバーを着せることで、私だけの本になる。
不思議だなあと思いながらも、今日も私はとある文庫のブックカバーを作るのだった。

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