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ジョン・アップダイクを読んでみる

ノルウェイの森の序盤に「若い頃はジョン・アップダイクの『ケンタウロス』が一番だった」とある。よし、本屋に行って買おうと思ったが、ケンタウロスどころかジョン・アップダイク自体が置いていない。なので地元の図書館に行って借りた。本を開けると昔にありがちな二段組だったので、ちょっと萎えた。文字が小さくて進まないので二段組は序盤で心が折れる。しかし、学生時代の村上春樹がトップに挙げていた本なのだから、最後まではちゃんと読もうと思った。

読み始めると、結構ドライブ感がある。一文が長いので無理やり読まされる感覚。比喩も連発してくる。正直かなりハズしているけど、たまに「いいねえ」というのが来る。ジョンアップダイクは「数打ちゃあたる戦法」を教えてくれる。「良い比喩が思いつかないなら、読者が呆れるくらいやればいい」ということらしい。

話自体はそれほど面白くない。でも「あと1ページだけ読も」と思わせる何かがある。感覚で言えば又吉の本に近いかもしれない。

はっきり言って、村上春樹がこの本をトップに置くのはよくわからない。分からないが、もしかしたら「ケンタウロスが村上春樹にとって初めてのすっとぼけ小説」だったのかもしれない。つまり村上春樹の初期に見られる、読者を小馬鹿にしたような文体だ。サリンジャーやロス、ブローティガンの方が簡潔で巧い。だから、村上春樹はかなり早い段階でこの「ケンタウロス」を読み、ジョン・アップダイクという人に個人的な好感を持っていたのではないか、というのが僕の意見だ。

この本を読むのにちょうど2週間かかった。3年前なら読み切れていないと思う。本を作家の好感度で読むようになってから、読書の幅が増えたの確かだ。

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