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サッカーにおける相手との関係性 |「間合い」とは何か

サッカーでは「首をふれ」という言葉がよく使われます。首をふる理由は、相手や周りの味方をみるためです。

サッカー経験のある人にとっては容易に理解できることだと思います。では具体的に相手をみるとはどういうことなのか。なぜ相手をみる必要があり、いつ、何をみるべきなのか。疑問に思ったことはありませんか。



サッカーでは、認知・分析・判断・実行のサイクルを選手一人一人が絶えず行っています。

この4つのどれかが原因でミスは起こります。例えば、相手の存在に気がつかず、相手のいる方へボールをコントロールしてしまいボールを奪われた。この場合は認知のミスといえます。

「首をふって相手をみよう」というコーチングは、認知によるミスのときには適切です。しかし、相手がいることがわかっていて、相手にとられないはずと判断して行ったプレーでボールを失ってしまった。この場合は適切といえるでしょうか。


今回はこの本を読み、考えたことについて書いていきます。


エネルギーのようなものを感じ取る

本書の表現を引用します。

間合いを形成するとは、場が内包する「エネルギーのようなもの」を敏感に感じ取って、自己の動きを臨機応変に調整すること

何事においても鈍感な人というのは、この「エネルギーのようなもの」を感じ取ることが苦手なのだと思います。対人関係でいうと、相手が以前聞いた話を長々と話し続けている場面を想像してみてください。聞くのが嫌になってきた際に、私たちは直接「もううんざりです」とは言わないものの、相槌や表情等で感じとってもらおうとするはずです。このときにも「エネルギーのようなもの」は生まれています。

サッカーが上手な人というのは、「エネルギーのようなもの」を感じ取り、行動を変えられる人だと思います。

サッカーにおいて選手各々、やりたいプレー(得意なプレー)とやりたくないプレーがあると思います。経験が浅いうちは、ドリブルで相手を抜くために、アニメにでてくるような必殺フェイントのたぐいを追い求めてしまいがちです。しかし、サッカーにはそんなものは存在しません。なぜならサッカーには相手がいるからです。ゲームのコンピュータのように、相手は常に一定の行動をとるはずがありません。相手にも得意なプレーと苦手なプレーというものが存在します。だから、プレーの判断というのは自分がやりたいからやるだけでなく、相手がやられたくないプレーが何なのかも考慮する必要があるということです。一番理想的なのは、自分がやりたいプレーと相手がやられたくないプレーがマッチしているときです。

この相手がやられたくないプレーが何なのかを理解する方法が、「エネルギーのようなもの」を感じ取ることだと思います。

エネルギーのようなものを感じ取るとは、相手が狙っていること、考えていること、次にとる行動を感じ取ることです。

対人競技をする際に、相手の次の手を予測することは非常に重要といえます。野球でピッチャーが次にどこに投げてくるかわかれば、打てる確率は高まるし、柔道で相手が次に仕掛けてくる技がわかれば、回避できる確率も高まります。では、どうしたら感じ取れるようになるのでしょうか。


一人称的視点とは

そのために重要なのは一人称的に関わるということだそうです。一人称的に関わるというのは、相手が自分ならどのように行動するかという視点のことです。

サッカーの試合で、ある選手がゴール前に綺麗なスルーパスを通したとしましょう。スタンドから見て、「ゴール前のスペースに上手にスルーパスを出せたね」と観察するのは、客観的な三人称的視点(外部観測)です。スタンドに陣取る解説者の立場です。一方、一人称的視点(内部観測)とは、パスを出した選手の目線のことです。パスをしようと思った瞬間、ボールを蹴った瞬間にその選手がみているものごとは、これからある場所にスペースができる可能性です。


自分が相手だったらどのように行動するか。相手に自分を投影して考える。これが間合いを意識するうえで大切な考え方になります。


冒頭の相手をみるという話に戻りますが、柔道では相手に触れることを通して、相手の狙いを感じることができます。しかし、サッカーでは相手に直接触れる機会は少なく、相手の狙いを感じ取るためには「みる」ことが重要になります。しかし、ただ相手をみれば、狙いが読めるわけではありません。サッカーのセオリーや相手の特徴、つまり何が得意で苦手なのかも理解してはじめて、狙いを読み取ることができます。

個人的にはサッカーのおもしろさは、この相手との読み合いにつまっていると思います。攻撃のときには相手が予測していないプレーをしたいし、守備のときは相手のプレーを読んで守りたい。そして、指導者は選手が何を考えてそのプレーを選択したかを理解してあげたい。

サッカーだけに限らず日常生活においても同じだと思いますが、自分のした行動を評価してもらえるのは嬉しいと思います。さらに、ただ行動を褒められるよりも、自分の考えを汲み取ってくれたうえで、褒められることはなおさら嬉しいと思います。

選手にサッカーが楽しいと思ってもらえる、部下に仕事のやりがいを感じてもらえるなどあらゆる場面において、一人称的視点をとおして相手の考えを理解することは重要だといえます。そのためにもまずは先入観をもたずに、相手をしっかりと見てあげる。そしてコミュニケーションをとり、相手が何を考えているかをきいてあげる。こうすることで、認知・分析・判断・実行の分析・判断についても改善を促すことができると思います。


まとめ

間合いを意識するとは、自分ならどう行動するか、どう考えるかという視点で相手に接すること。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

では何卒。


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