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島はぼくらと | 辻村深月 | ☆☆☆☆

ストーリー構成力を信頼しているので、最後まで集中して読める。

瀬戸内海に浮かぶ小さな島に暮らす、高校生4人の葛藤、閉鎖された島ならではのしきたり、そこに入ってくる人たちとのやり取り、最後まで安心して読める、とても面白いストーリーでした。

ある程度の制約

離島には高校、大学が無く、病院すらもありません。高校に行くには連絡船に乗る必要があるということで、自分の思い通りに人生をすすめることができないという制約。自分の進みたい道に進めない、親のエゴで連れてこられ、そこで暮らそうとする、など、それぞれの気持ちがありありと描かれています。
制約があるからこそ、その中で生きるとか、そこからはみ出すという欲求とか、10代ならではのみずみずしい考え方を持ち、周りにいる大人から刺激されながら、だんだんと成長していく姿が垣間見えます。
私はそういう環境で育っていないせいか、その、田舎ならではのしきたりみたいなものや、閉鎖されたところでの窮屈な暮らしなど、住みづらいように見えましたが、当の本人たちはそれが自然だったので、私が思うほど、窮屈には感じていないですよね。
だからこそ、ストーリーに刺激が生まれるんだよな、と思うのは、そのしきたりみたいなものが一般的なものではないから、非現実感が生まれ、物語としての興味が湧いてくるのだろうな、と思います。

伊坂幸太郎はよく、IT業界で働く30歳前後の男性を使いますが、それはそれで私と近い環境だったせいか、共感することがあります。
それはそれで良いですけど、今回の作品みたいに、私が(おそらく)今後触れることのない環境について描かれるのは、新鮮だったりします。

キャラクターとしての個性

この人はホントに魅力的なキャラクターを作るよな、と思うのですけど、この作品に出てくる人たち全体に言えるのは、全体的に自分をきちんと持っている人、ということ。
狙っているのか分かりませんけど、サイコパスみたいな、ナチュラルボーンな悪者みたいな人は登場しません。ティーンエージャーに向けた作品にしたのかな、と思ったりもします。登場人物は高校生だしね。別に、そういう世代の人が読んでも十分面白いですこれ。

ストーリーについての感想

ネタバレします。

ストーリーとしての合理性が欠ける部分というか、ちょっと強引じゃない?と思えるシーンがいくつかありました。小説ならでは、という点もあるのかもしれませんけど、今回思ったのは、あえてそういうところを残すことで、小説の印象をきちんと残すのかな、なんて思ったりしました。
あまりにもあっさり終わるというか、全ての辻褄がいい感じに合ったりすると、逆にストーリーについて忘れちゃったりするのかな、なんて。

今回で言うと新橋の劇場で会った脚本家。さすがに強引だろ、出来すぎだろと思いましたけどね。けど、そういう爪痕を残すことで、その部分はだいぶ印象に残ったなぁ、なんて思ったりしてます。

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