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趣味のデータ分析005_資産所得倍増④_みんなの「資産」

隣のご家族はいくら貯金してるのか?

さて、前回まで資産所得というフローの概念の分析をしてきたが、今回からはそもそもの国民の資産というストックに目を向けたい。と言っても、資産全体だとちょっと議論が拡散するのと、引き続き資産所得倍増プランには注目したいので、「家計の金融資産」、端的には一般市民が預貯金や株式、投資信託等をいくらお持ちなのか、というところを分析していく。土地や住宅などの不動産は、原則分析対象としない。

と思ったけど、とりあえず全体像見たほうが良くね?と思ったので、土地など不動産を含めた「家計資産全体」について、まずは分析していこう。れっつらごー。

隣のご家族の資産がわかるデータ

「家計資産全体」を調べられるデータは、ここでもやっぱり国民経済計算と家計構造調査の2つとなる。国民生活基礎調査は残念ながら「貯蓄」しか調べられない。つまり、土地とか不動産の状況は含まれていない。ていうか、国民の資産について調べているデータって本当に少ない。フローは事業者側からの統計でも個人の所得が一定程度わかるけど、ストックはなかなかそうはいかないし、アンケート調査でもなんか個人のストックに着目しているのが少ないような気がする。マイナンバーで銀行口座と証券口座と土地の登記簿を結び付けられれば、そのへんの統計がすごく素敵に作られるんだけどなぁ。

まあそれはともかく、それぞれの統計でどうなっているかを見てみよう。まずは国民経済計算。注意してほしいのは、これは「家計全体」のデータということ。要するに日本全体の合算値である。

家計資産の推移
(出所:内閣府「国民経済計算」

これによると、日本の家計資産は、1994年から趨勢的に土地が減少する代わり、現預金が増加してきて、全体としては3,000兆円くらいで大きな変化なく推移してきた、ということだ(2011年ころから増加傾向ではある)。

では次に、家計構造調査に移る。今回はこっちも頑張って時系列にしてみた。ただし20014年以前と2019年でデータが不連続である。また元データは世帯別なので、各年の総世帯数を単純に乗算している。

家計(純)資産の推移
(出所:総務省「家計構造調査」

これについてはまずデータの説明が必要だ。まず2014年以前は耐久財のデータがあり、それを「住宅等」に入れ込んでいる。
第2に、そもそも2014年のデータには「純資産」と「総資産」というデータがあり、総資産は住宅と耐久財について、総務省で定義した計算法で算出された価格そのまま、純資産では総資産での価格を一定基準で減耗させた(減価償却のイメージ)価格が採用されているのだが、このデータでは「純資産」のデータを使用している。これは、2019年のデータが純資産での計算法のデータしかなく、定義を揃えるためである。
さらに、住宅や土地の価格は、築年数や建物構造などから、総務省で定めた計算式から機械的に算出している。土地価格をアンケートで回答、と言われても無理筋ではあるが、これはこれで信頼度はどうなんかなぁ、という気がする。

ともあれ数字を見ると、内閣府の数値より1,000兆円ほど少ない、2,000兆円程度でほぼ横ばいに推移している。さらに、有価証券は若干増加傾向にあるが、それ以外はいまいち趨勢が見えない。土地と現預金のバーター的動きとかも特に見受けられない。

隣のご家族の土地は安くなった…か?

内閣府と総務省、この2つのどちらが正しいかはちょっと難しい。一応簡単に傍証を試みる。見るのは土地の公示価格及び家計の土地資産額の推移である。いずれも国交省のデータから取得可能。
データ的には後者があれば十分だろ、という感じだが、後者は特に1998年以前のデータがなく、「家計が保有している住宅地の面積×住宅地価格の全国平均」で推計したものである。もちろん家計が保有している土地は住宅地だけでなく農地山林もあるので本来過少集計気味だが、実際はおそらく、これでも過大集計になっている。多分家計の土地所有は地方に大幅に偏っている一方、公示価格は全国平均なので、農地山林を集計できてなくてもなお過大気味になっているんだと思う。

住宅地公示価格(全国平均)及び家計保有の土地資産価格の推移
(出所:国交省「地価公示」「世帯土地統計」

ただ、1998年以前が過大であるとしても、趨勢的に減少傾向なのは事実なのではないか、と思う。ほぼ横ばいという総務省のデータは若干信用出来ない気がする。
ただ、このノートでは、マクロの値として何が真の値かは結論しないこととする。絶対水準自体は正直議論するつもりもあまりないからだ。ただ政策対応がどちらのデータをもとに行われるのか、という点は注意する必要があるだろう。

まとめると、日本の家計総資産は、全体として少なくとも増加はしていない、というのは言えるだろう。ただ土地資産額は減少していて、現預金が増えているようにも見えるが、確言はしにくい。それ以外もイマイチ著変という点は見当たらない。分析としてはすごくつまらない感じになってしまった。
傍論が長くなったが、冒頭述べたとおり、次回以降は金融資産、つまり土地と住宅以外の、預金や株式等の金融資産に着目していく。でも不動産もどっかで戻って分析はしたいなぁ。不動産の保有状況は、金融資産の保有状況についてもそれなりに影響を与えていると思うし。

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