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vol.7 マティーニについて①(ジンベース)

※こちらもかつてアメブロで記載していたものを移行しています。
※TOPの写真は、カメラ兄さんさんによる写真ACからの写真

前回、Gin(ジン)についての記載をしましたので、今回は、ジンベースのカクテルの王様『マティーニ』について書きたいと思います。

1.マティーニの歴史

元々は、イタリアの『Martini&rossi社(マルティーニ&ロッシ社)』が自社のベルモットを販売拡大する際に作成したのが始まりです。(ベルモットとは、白ワインにニガヨモギ(vermouth)等のハーブやスパイスを配合したフレバード・ワイン。名前の由来は、ニガヨモギのベルムーソからきている。)

『マティーニ』のオリジナルのレシピは

  ・ドライジン
  ・スウィート・ベルモット

  (イタリアン・ベルモットorベルモット・ロッソ)

  を2:1でステアして、カクテルグラスに注ぐ

というもので、現在の透明なマティーニではなく、カラメルの入ったスウィート・ベルモットを使っている為、甘口で、かつ色もカラメル色に近いものでした。

これが、時代の流れとともに味がドライ化していき、スィート・ベルモットがドライベルモットに変わり、ジンとベルモットの割合もジンの割合を増やす(ドライ・ベルモットを減らす)といった事がおき、現在では、比較的ドライに仕上げていない店でも

 ドライジン    : 5

 ドライベルモット :    1 
(スタッフド・オリーブをデコレーションとして入れる。)

といった割合で作られるようになっていきました。

また、マティーニから派生したカクテルも多く存在し、パーフェクトマティーニブックといったマティーニ、およびその派生カクテルのレシピだけで500近くをまとめた本も出ているほどです。

そのシンプルなレシピからは、考えられない程奥の深いカクテルでもあります。

私の経験上も、ジントニックやマティーニといったような素材を2、3しか用いないものでステアやビルドで作るものの方が、オリジナリティーを出すことも難しく、そのバーテンダーのこだわりの集大成が出るカクテルともいえます。

たとえば、違いの出る部分として

 ・ジン、ベルモットはどこのメーカーのものを使うのか?
 ・ジンとベルモットの割合は?
 ・アンゴスチュラビターズ、オレンジビターズを入れるのか?
 ・ジンは、常温保存か?冷蔵保存か?冷凍保存か?
 ・ミキシンググラスは常温保存か?冷蔵保存か?冷凍保存か?
 ・ステアの回数は?
 ・最後にレモンピールを絞るのか?絞った後のレモンピールは、
  グラスの中に落とすのか?捨てるのか?
 ・スタッフドオリーブは、何個つけるのか?グラスの中に入れるのか?
  お皿の上に乗せ、サイドに沿えて提供するのか?

等々あります。

それ故にそのバーテンダーのこだわりによって、仕上げ方が変わってきます。

日本においての伝説のマティーニの達人としては、『ミスターマティーニ』こと今井 清さんがいらっしゃいます。

現在は、なくなられてしまっていますが、そのマティーニを目指し、多くのバーテンダーが修行を積んでいます。

ちなみに、今井さんのマティーニは、ジンは、Gordo(ゴードン)、ドライベルモットは、Noilly Prat(ノイリープラット)を10:1でドライに仕上げていたようです。ジンは、冷凍庫でなく、香りを出す為に冷蔵庫で保存していたものを使い、道具も冷蔵庫で冷やしておき、『強さと冷たさ』の両立させていたようです。ちなみにオレンジビターズも入れ、レモンピールもしていたようです。

また、お客様によってレシピも変化させていたと言う事です。

現在では、もう今井さんのものは飲むことはできませんが、それぞれのバーテンダーの考えた最上のマティーニをいろいろ楽しむのもいいと思います。

2.マティーニと有名人の蘊蓄

マティーニの話で出てくる有名人として英国首相のチャーチルと007のジェームスボンドがいます。

それらについてちょっと触れたいと思います。

・チャーチル

 エクストラ・ドライ・マティーニが好きと言われており、そのドライを突き詰める姿勢のすごさを伺わせるエピソードがあります。

 『ドライ・ベルモットを入れずにそのボトルとラベルを見ながら、ジンを飲む』といったそれって、ジンのストレートじゃんと言ったものから、執事にベルモットを口に含ませてその息を吹きかけさせたり、飲んでいる横で「ドライ・ベルモット」と言わせたといった逸話があります。

 たぶん、当時敵国のイタリアが発祥のベルモットを飲むと言うこと自体があまりよくないと言った風潮から、話が大げさになったのではないかと思います。

・007のジェームス・ボンド

 純粋なマティーニではありませんが、ウォッカマティーニをシェークすると言った独自の『ボンド・マティーニ』を生み出したことで有名です。

 通な人からすれば、マティーニのジンをウォッカにし、ステアで作らずにシェークすると言った所が、受けたのではないかと思います。

 映画の中で ”Vodka martini, shaken, not stirred” と言って注文をするのですが、こんなセリフが似合う男になりたいものです。

 また、小説『カジノ・ロワイヤル』では、いつもとは違った

  ・ゴードン・ジン 3 
  ・ウォッカ 1
  ・キナ・リレー 1/2

 のレシピでシェークし、シャンパングラスに注ぎ、薄く切ったレモンピールを入れるといった注文をしています。

 ちなみに原文は
 ”Dry Martini...” ”Wait...three measures of Gordon's; one of vodka; half a measure of Kina Lillet. Shake it over ice, and add a thin slice of lemon peel.”

これが、映画化された時に有名になり、その時のボンドガールの名前を取って ヴェスパー・マティーニと呼ばれるようになりました。当時、あまり生産をしていなかったキナ・リレーが品薄になり、希少なカクテルになるといったことも起きたそうです。(現在キナ・リレーは生産中止となり、代わりにキナ・ブランを使います。)
ボンドにも負けないくらいの自分なりのオリジナルマティーニを編み出したいものですね。。。。

あっ、そうそう、ちなみにマティーニは胃をあっため、活発にする食前酒ですので、できれば、お食事の最初に注文することをおススメします。

ジェームス・ボンドの話を書いていて、そういえば映画の中に出てくるカクテルって結構多いので、そのうち、取り上げたいと思います。(カサブランカのシャンパンカクテル、ボディーガードのスクリュードライバー等々)

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