幻想曲

玻璃はりで出来たおおきな象が
のっそり のっそりと歩いて来る
何を視ているのかも判然はっきりとしない 
透明な瞳をして彼は歩いて来る

乗っている人は誰もいない
彼は限りなく自由なのである
のっそり のっそりと歩みながら
やがて 泉のところで歩みを止めた

玻璃で出来た巨きな象は
泉に長い鼻をたらして すくい上げ
ごくごくと泉の水を飲んだ

すると巨象の体は七色に光り
口からエーテルの息を吐いたかと思うと
幻のように音も立てずに消えてしまった


(2024.5.25)

玻璃…水晶のこと。或いはガラス。
エーテル…光や電磁波を伝達する物質として宇宙空間に満ちていると考えられていた物質。

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