デザイナーの領域に土足で踏み込む
あたらしいコンセプトの携帯端末を開発していたときのことです。新人のデザイナーがスケッチを持ってきて、それを具体化する回路やソフトを作っていたのですが、コンセプトに合う画面をデザインする必要がありました。そのデザイナーは学生のころからグラフィクスデザインが得意なので、そちらもお願いしてよかったのですが、あえて自分で作成して、試作品に埋め込みました。役割分担をあえて崩してみたのです。それよりも、インタフェースの流れが破綻している箇所があり、どうすればいいか考えてほしいと依頼しました。ボタンがひとつもない端末というコンセプトだったのですが、ボタン操作がないとインタフェースが完結しないのです。いくつか持ってきてくれたのですが、直感的ではない流れになってしまっていて、ダメ出しして、また別のアイデアを持ってきて、ダメ出しして、というやり取りを繰り返していました。最後にはボタンを付けましょう、という案まで出てきましたが、最初のコンセプトが美しかったので、認めませんでした。彼もずいぶん考えたのでしょう、最終的にはコンセプトを見事に具現化しつつ、ボタンも不要なインタフェースを考えてきてくれました。これには感動しました。このプロトタイプの最大の特徴にもなりました。
デザインはデザイナー、インタフェースの整合性を考えるのは技術者という従来の役割分担では生み出せなかったと思います。
ですが、「ボタンをつけたがる技術者」vs「ボタンはつけないというデザイナー」の図式がメディアにはわかりやすく、私たちもそういう経緯だったということにして、紹介していました。
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