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使いやすい画面の美しさと機能

 美しいからといって機能的だとは限りませんが、機能的なものは美しいと思います。元内田洋行のデザイナーで多摩美術大学の若杉浩一教授は、「働く家具は美しい。病院の薬品棚ってすごく美しい」とおっしゃっていました。デザイナーが関わっていなくても、機能を追求した結果、美しい製品や設備がたくさんあります。機能美ですね。単に装飾を排したからだけではない、力強さや優雅さを感じることがあります。
 私は常々、大きなプラントも美しいと思っていました。スペインのセビリアで開催された水関係の会合で、朝コーヒーを飲みながら隣に座っていた人と話をしていると、その人はオーストラリアのアデレードの海水淡水化プラントの所長でした。「大規模かつ先進的なことで有名なプラントですよね」と伝えると、「いや違う、世界で一番美しいプラントだ。機会があったらおいで」と言ってくれました。もちろん社交辞令だとは思いましたが、あえて本気にして2か月後に見学をさせていただきました。やはり機能的なものは美しいと実感しました。
 機能的なものは美しい、と言ったのは建築家の丹下健三だと思い込んでいましたが、実は真逆の意味でした。丹下の著書『人間と建築』(1970)では、機能的なものが美しいと思ってしまうと、技術至上主義の狭い道に迷い込んでしまうので注意が必要だと主張されています。そして、「美しきもののみ機能的である」とおっしゃるのです。機能をまとめあげていくことはデザインの大切な役割のひとつですが、この言葉はさらに先のことを言っているように感じます。いつか、個展が開けるようになるほど、美しい画面を作っていきたいと思います。
 とは言っても、プログラマーとしては、美しいけど使いにくいものより、使いやすくて結果的に美しいものを作りたい。ソフトウェアの画面に多くの情報を表示しなければいけない場合、使う人の目は画面のあちこちを忙しく移動します。この目の移動をスムーズに誘導し、快適に操作できる画面が、良いインタフェースだと思います。ここで私がいつも意識しているのが「誘目性」です。

4. 美しいもののみ機能的


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