見出し画像

第75回 義朝、次男朝長(ともなが)を斬る。

平家軍に敗れた義朝一行は東国へ逃げていましたが、途中、比叡山の横川(よかわ)の悪僧たちが作った関所で捕まりました。何とか振り切ったものの、集団は細かく分かれざるを得ませんでした。
家来の三浦義澄、斎藤実盛、岡部六弥太、熊谷直実など二十余人の者は、暇を賜って思いおもいに国々へ下向しました。

勢多で、義朝に付き従っていた子供たちも散りぢりとなりました。
長男の義平には信濃に行って兵を集めよと命じました。13歳の三男頼朝は見当たりません。雪の中で遅れてはぐれてしまったのです。
次男の朝長(ともなが)は、さきほど比叡山の僧兵に矢を射られ、足を怪我したせいで歩けなくなってしまいました。朝長は健気にも言いました。
「このままではきっと敵に見つかって討たれてしまうでしょう。父上の手でお討ち下さい」
「普段は臆病者と思っていたのに・・・」
義朝は、静かに合掌する息子の首を涙ながらに打ったのでした。

義朝は船で妻の父がいる熱田を目指しました。しかし冬の海は大荒れでした。(続く)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?